申京淑(シン・ギョンスク、신경숙)の小説「母をお願い」(安宇植訳、集英社文庫)の中で、長兄をソウルに送り出した後、切ない思いをする母親(オンマ)について触れるところがある。庭先に並べた容器の甕(かめ)をこすりながら、遠くの息子に心通わせようと母親が口ずさむ。
(第一の)主人公である娘は、母親の心境と涙に気付いていたろうに、その後ろ姿に「オンマ!」と呼びかける・・・。
そのとき、母親の口からトロットの一節を聞いている。ナムジン(南珍、남진)の「カスマプゲ(痛心、가슴아프게)」(1967年)の出だしの「わたしとあなたの間にあの海がなかったら/辛い別離だけはなかったろうに・・・・・・」や、ナフナ(羅勲児、나훈아)の「愛は涙の種(사랑은 눈물의 씨앗)」(1968年)の「・・・・・・いつかあなたは/わたしを棄てたりなさらないでしょう」だ。
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