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2016年11月25日金曜日

クラーナハ展

16世紀初頭活躍した、広義の北方ルネッサンスの画家「ルーカス・クラナッハ(Lucas Cranach)」(1472年10月4日~1553年10月16日)の展覧会が、上野の国立西洋美術館で開催されている。

(本ブログ関連:”北方ルネッサンス”)

昨日の雪降りの寒さとうって変わって、今日は陽射しもあり、この機会に出かけることにした。上野駅を出ると、路肩に雪跡すらない。人出も多く、まるで休日の賑わいだった。

展覧会の名称は、「クラーナハ展 ― 500年後の誘惑」である。この画家の名前を、昔から「ルーカス・クラナッハ」と聞いてきたが、今回、「ルカス・クラーナハ」と呼ばれている。(日本人にとって)ドイツ語らしさが半減するような気がする・・・ドイツ語で登録したYoutube映像を聞くと、「ルーカス・クラナハ」が自然のようだ。以下、親しみのある「クラナッハ」の名で記す。

ルーカス・クラナッハの制作拠点は、ヴィッテンベルク(Wittenberg)で、現在その都市名に「ルターシュタット(Lutherstadt)」を冠している。(クラナッハとルターの関係もあり)それゆえドイツ宗教改革と縁深い。芸術の時代潮流も広義の「北方ルネッサンス」というより、「ドイツ・ルネサンス」と細分化される。そうそう、今は「ルネッサンス」と呼ばず、「ルネサンス」というようだ。

今回、展示を見てクラナッハ作品の印象が変わった。北方ルネッサンスに見るような、繊細で<華奢>な女性像のイメージがあったが、それだけではないということ。クラナッハは宮廷画家として活躍しており、かつイタリアへの遊学(アルプス越え)もあるようで、人物画に多種多様な表現、すなわち豪奢、ふくよかさ、世俗さまである。
宮廷画家としての権威と、工房を持つ親方・プロデューサーの雰囲気も感じた。同時代性を確認する意味から、同じドイツ人の画家「アルブレヒト・デューラー(Albrecht Dürer)」( 1471年5月21日~1528年4月6日)の作品も配置されたが・・・。

今回、一番驚いたのは、目元が魅力的で惹き付ける「ヴィーナス」(1532年、シュテーデル美術館蔵)の絵のサイズが、37.7×24.5cmだったことだ。もっと大きな絵柄を想像していた。秘かに鑑賞するのか。

展覧会カタログ(ガイドブック)の解説に、「女性の刺激を攻撃的なまでに放つ表現」とある。この一見<華奢>なヴィーナス像に、展覧会のタイトルにある、<誘惑>が込められている。

私としては、この絵に決してふくよかではない、北方のルネッサンス特有の女性像を見てとれる。昔から、ルーカス・クラナッハの絵画として一番先に思い浮かべるものだ。

そうそう、カタログにある、この作品解説の最後に、「このあまりに刺激的な《ヴィーナス》は、もし単独で見つめられるなら、そうした道徳的なメッセージなど、なきものにしてしまうものである」と。

もちろん教科書に載る、ルターの肖像、不釣り合いなカップルなど見られる。また、版画について、その、木版の精緻さも驚く。エッチングに似た「エングレービング」の技法に迫るほどである。木版画の技法も知りたいところだ。なにしろ版画がなければ、作品を広く人々に知られることがなかったのだから。

(展示に、デューラーなど同時代の画家たちの作品を併置するのは了解できても、インスピレーションを受けた現代作家のものは疑問)