今夕の月は、月齢14.6の「満月」。曇り空のなか、月が南中するとき(17時49分)、その高度は 73.47° とのこと(国立天文台:三鷹市)。夜分も曇り空がつづき、窓から外を覗いて見たが変わりない。路上に出て再確認する気も失せて・・・。
米国の「農事暦」(The Old Farmers’ Almana)*によれば、今月の満月を「ビーバー月(Beaver moon)」と呼んでいる。由来について、ビーバーが(川にダムを作った中央部に)巣作りする月など諸説あるようだ。
(*)農事暦: https://www.almanac.com/full-moon-names
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農事暦で使用している月の名前は、「ネイティブ・アメリカン」、「植民地時代のアメリカン」、あるいは「その他の世代を超えて受け継がれてきた伝統的な北米の情報ソース」に由来している。
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今月は、旧暦とまるまる被っていて、新暦の11月1日が、旧暦の10月1日である。その意味で、旧暦10月で見れば「神無月」にあたる。
高校生のころだったか古典の授業で、吉田兼好の「徒然草」*に、「神無月」について触れる第11段「神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて」があった。このとき初めて「
閼伽棚(あかだな)」というものを知った。実はネットで、閼伽棚の写真を見ても、どこかで以前見た記憶がない・・・いまだにピンとこないのだ。
(*)山梨県立大学の「徒然草DB」
ー https://www2.yamanashi-ken.ac.jp/~itoyo/tsuredure/turedure000_049/turedure011.htm
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神無月のころ、栗栖野といふ所を過ぎて、ある山里に尋ね入る事侍りしに、遥かなる苔の細道を踏み分けて、心ぼそく住みなしたる庵あり。木の葉に埋もるゝ懸樋(かけひ)の雫(しずく)ならでは、つゆ(ほとんど)おとなふ(音を出す)ものなし。閼伽棚(あかだな)**に菊・紅葉など折り散らし(無造作に置く)たる、さすがに、住む人のあればなるべし。
かくてもあられけるよとあはれに(感じ入って)見るほどに、かなたの庭に、大きなる柑子(こうじ=みかん)の木の、枝もたわゝになりたるが、まはりをきびしく囲ひたりしこそ、少しことさめて(興ざめして)、この木なからましかばと(この木さえ無かったらよかったのにと)覚えしか。
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(**)閼伽棚(あかだな): 仏具や花などを仏さまに供える祭壇
これで、「水」中生物のビーバーと、仏に供養される「水」(=閼伽)とが何となくつながった。
(追記 11/29)
と思ったところ・・・閼伽棚に花など置く他に水を盛ることがあっても、それは「棚」の問題であって、「水」=閼伽 とはならない。閼伽には水の意はないと知った。
少なくとも大正時代の初期(4年)に、閼伽=aqua の俗説が流布していたという。サンスクリット研究(インド学)の立場から原点にさかのぼり、相違を解説した論文がある。
■ 「歴史言語学」(2014年11月号 vol.3)
Forum「Skt.argha-/arghya-、閼伽、Lat. aqua」(笠松 直: 仙台高等専門学校) https://researchmap.jp/SunaoKasamatsu/published_papers/22932320/attachment_file.pdf
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仏教語「閼伽」がサンスクリット argha- 「価値」 ないし arghya- 「価値ある」 の音写語で. あること、ラテン語 aqua と語感は似ているものの全く別の単語である。
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