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2021年4月29日木曜日

アホウドリ

探鳥会のベテランの方からいただいた大部の鳥専門誌「BIRDER」のバックナンバーを順に見ていたら、2016年4月号に、外洋性の海鳥「アホウドリ」についての観察記があった。「ぶらり鳥見 散歩道」の連載があって、まさに春の4月にふさわしい「アホウドリが身近に感じる極上の船旅 (八丈島航路)」(筆者 ♪鳥くん)といったタイトルだ。

筆者は、伊豆七島南端の島である八丈島行きの客船「さるびあ丸」に乗船して、オープンデッキから洋上を飛翔するアホウドリをウォッチングする予定だった。しかし海が荒れて三宅島辺りで引き返すことになる。ようやく大島近くに戻ったころになってアホウドリをゆっくり観察できた。なのでいささか乗船記でもあるようだ。

ところで「アホウドリ」の表記に<阿保鳥>と<信天翁>があって、その由来について「野鳥の名前 名前の由来と語源」(著:安部直哉、写真:叶内拓哉、ヤマケイ文庫)は次のように紹介されている。
・<阿保鳥>について、知られたことだが飛翔の力が秀でているものの、脚が短いため地上での歩行動作が鈍いことから、上質の羽毛採取を目的に簡単にあやめられてきた。
・<信天翁>の方は、「天を信じ、天に身をまかせている翁」といった一見立派に聞こえるが、結局は「鈍で阿保な鳥」の暗喩といわれているという。

アホウドリは、そんなわけで分が悪いけれど、私は<阿呆>が好きだ。だからブログに阿保なことを記し続けている。

(本ブログ関連:”阿呆”)

以前も、アホウドリの<阿呆>さに触れた。ボードレールの詩集「惡の華」(訳:堀口大学、新潮文庫)には「信天翁(あほうどり)」の詩があって、それはまあ意地の悪い表現で書き連ねられている。(抜粋)
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   しばしばよ、なぐさめに、船人(ふなびと)ら、
   信天翁を生捕(いけど)るよ、
   潮路(しおじ)の船に追いすがる
   のどけき旅の道づれの海の巨鳥(おおどり)。

   青ぞらの王者の鳥も
   いま甲板(かんぱん)に据(す)えられて、
   恥さらす姿も哀れ、両脇(りょうわき)に、
   白妙(しろたえ)の両の翼(つばさ)の、邪魔げなる、櫂(かい)と似たりな。

また、アホウドリの学名Phoebastria albatrusから、アルバトロスの名を持つ*。アルバトロスに阿呆の意はなく、むしろ漢字の信天翁の字面に近い印象がある。白髪の預言者なのかもしれない。また、ゴルフ用語にアルバトロスがあって、パーより3打数すくなくカップに入れることで、優れた飛翔力が要る**。
(*)野鳥の学名入門(菊池秀樹氏): http://yacho.org/cbird/pages/4_kazakiri/binomina.htm
(**)鎌倉パブリックゴルフ場: https://kamakura-pg.com/blog_meaning-of-the-albatross/

(余談)
ところで子どものころ、ご多分にもれず飛行機ファンだった私は、雑誌「航空ファン」に連載された第一次大戦中のドイツの撃墜王、リヒトホーフェンの活躍を読んだ。貴族出身の彼は、乗機アルバトロスの複葉機を赤く塗装させた。それは、日本の戦国武将が<緋威の鎧(ひおどしのよろい)>をまとい存在を誇示したのに通じる気がする。

中島みゆきの歌に「あほう鳥」がある。歌詞はいかにも、あんちゃんとその女といった人物模様だが、次のような対の表現が面白い。(以下抜粋)
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   あたしは とても おつむが軽い
   あんたは とても 心が軽い

余談の余談になってしまうが、彼女の「歌姫」にも印象深い対表現がある。
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    男はいつも 嘘がうまいね
    女よりも子供よりも 嘘がうまいね
    女はいつも 嘘が好きだね
    昨日よりも明日よりも 嘘が好きだね