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2015年3月11日水曜日

冬の蟻

ねぐら(塒)深く、酔いつぶれたアリの親方がテーブルに顎(あご)を置いたまま、この冬はしばれるといって、ぶつぶつ話しを続けた。・・・周りは、眠い目をこすりながらじっと耳を傾けた。

なんだとお、ねぐらというのは鳥の巣のことだと、わしらは昔は飛んだものだぞ。今だって、御かみさんの後について行くときゃ、羽をぶんぶんいわせるもんだ。そん時だけだがな。

それに、カチカチいうスズメバチも近い親戚だ。やつらは空を飛んで餌を探し回るが、わしらは地べたを這って探すわけよ。だから羽は邪魔。でも、顔を見ろ、そっくりだろ、どうだ。

それときたら、あのシロアリ野郎、勝手に名前を盗みやがって。やつらはゴキブリ野郎さ。堂々とお天道様に顔向けできない奴らだ。わしらとは違う。オスにしてもな。

でもなあ、人間の子どもは残酷なもんだ。小さいくせして、わしらのねぐらに一生懸命水を流し込むのだから。あれには参った。部屋中水びたしだ。奴らは飽きっぽいから大丈夫。逃げ道はいくらでもあらあな。

今日も寒いな。こうやって幸運にも生き残れるのは、神様の思し召しというもんだ。じき暖かくなりゃ仕事だぞ。ゆっくり体を休めておけよ。・・・周りの連中も、付き合いにぐったりして横になり寝息を立て始めた。