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2024年7月10日水曜日

ミレイの「オフィーリア(Ophelia)」と泰西名画

19世紀の英国に登場した、アンチ古典主義の画家集団「ラファエル前派」の一人に、「ジョン・エヴァレット・ミレイ(Sir John Everett Millais)」(1829年~1896年)がいる。特に彼の作品「オフィーリア(Ophelia)」(1851/52年)は、男性をおおいに惹きつけてやまない。

何度かブログに記したことだが、公園をなだらかに流れる小川の岸辺を、木立が被って陽の光がとざされる場所がある。絵画の中でしか知らぬが、平坦な地を流れる英国の川面を想い起させる。そして、そんな木陰の川筋を、ミレイの絵「オフィーリア」と結びつけたくなる誘惑にかられる。

(本ブログ関連:”ミレイ”)

ミレイ作「オフィーリア」
次の「Google Arts & Culture」*のリンク先で、ミレイの作品「オフィーリア」画像を高解像度(リンク先で表示の画像をダブルクリックする)で鑑賞できる。ひどくはかなく、残酷な、そして美しい作品だ。
(*)Google Arts & Culture
- https://artsandculture.google.com/asset/ophelia-sir-john-everett-millais/-wGU6cT4JixtPA?hl=ja


ちなみに、上掲の絵画解説に「彼女が手にしている花は象徴的で、『ケシ(ポピー)は死を、『ヒナギク(デイジー)は純潔(無垢)を、 『パンジーは無駄な(むなしい)を意味している」と記されている。これらの中で、唯一の救いはデイジーの花かもしれない。
(実は、彼女の死を劇中で伝えた「ガートルード王妃」は、「シラン(芝蘭)」(変わらぬ愛)の花も語る)

(本ブログ関連:”デイジー”、”メアリー・ブレア”)

シェークスピアの劇「ハムレット」4幕7場、ガートルード王妃の語り
ー 坪内逍遙(1859年~1935年)訳
ー「PD図書室」に掲載:感謝
http://books.salterrae.net/osawa/html/hamlet.html#hamlet-4-7
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斜(なゝめ)に生ふる「青柳」が、白い葉裏をば河水の鏡に映す岸近う、「雛(ひな)菊」、「いらぐさ」、 「毛莨(きんぽうげ)」……  褻(みだら)なる 農夫(しづのを)は汚らはしい名で呼べど、 清淨な處女(むすめ)らは死人の指と呼んでをる…… 「芝蘭(しらん)」の花で 製(こしら)へた 花鬘(はなかづら)をば手に持って、狂ひあこがれつゝ來やったげなが、 それを掛けうとて 柳の枝に、 攀(よ)づれば枝の 無情(つれな)うも、折れて其身は花もろともに、 ひろがる裳裾にさゝへられ、 暫時(しばし)は たゞよふ水の 面(おも)。  
最期(いまは)の苦痛をも知らぬげに、人魚とやらか、水鳥か、歌ふ小唄の幾くさり、 そのうちに水が 浸(し)み、衣も重り、身も重って、歌聲もろとも沈みゃったといの。
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泰西名画
西洋絵画に描かれる顔の表現で、いつも気になることがある。白人特有の皮膚によるのか、(西洋画の肖像画の技法として承知していることだが)皮下を走る静脈が強調されることだ。だから、明治期に欧州へ絵画留学した日本の画家が、帰国して日本人を対象に同様な表現を試みた・・・結局、アジア人に似つかわしくないことに気付くことになるのだが。

オフィーリアの絵に、青味を下地にした顔を見るたび、生を残し浮遊する凄みを感じざる得ない。

ミレイの絵画には、どこか古風な感触がある。ぼくらが子どものころ聞いた「泰西名画」(本来はただ西洋絵画の意味でしかないのだが)の言葉の持つ、重い響きと暗鬱なイメージにつながる。そんな想いをする人物がいる。

(本ブログ関連:”泰西名画”、”絵画”)

以前読んだ、久世光彦著の「泰西からの手紙」(文芸春秋、1996.1~1997.12掲載より)から、そこで語られた「泰西名画」のイメージについて、似たような感想を持つことができる。
それは、泰西名画の言葉の響きに接した経験ある人なら大方が、夕暮れの光翳るなかに浮かぶ印象にたどりつくだろう。古書店で出会った古い美術書の、印刷技術が不十分な挿絵を見たときの印象だ。そんな思い出が語られる。
確かに昭和の時代、中産家庭の応接間には、泰西名画というにふさわしい古風な絵画が飾られていた。なぜあるのか誰も問わない、部屋の調和のために父親がどこからか運び込んだらしい、重い額縁に縁どられた絵があった。


参考:
(Youtube)「山田五郎 オトナの教養講座」
「【ミレイ】川で何してるの? 戯曲を描いたラファエル前派の最高傑作!【オフィーリア】」
https://www.youtube.com/watch?v=Fv05w_67pLo