▼▼ 青字下線付語句のリンク先は、マウス右クリック+<新しいタブ>で進んでください。(本ブログ関連)の最下段に「次の投稿ホーム」があるとき次ページがあります。▼▼

2012年3月23日金曜日

音楽評論家カンホンの大衆音楽散歩

国際新聞の記事「音楽評論家カンホンの大衆音楽散歩<49>"メンター" イ・ソンヒ」(3/20)は、サブタイトルに「30年間ひたむきに座を守った彼女に敬意を」として、MBCのオーディション番組「偉大なる誕生2」に参加しているイ・ソンヒを、音楽評論家カンホン(강헌)が次のように評している。感謝。

・MBCのオーディション番組「偉大なる誕生2」がいよいよトップ3に絞られた。生存者はペ・スジョン(배수정、女性)、ク・チャミョン(구자명、男性)、そしてチョン・ウンジン(전은진、女性)で、女性が二人だ。

・今までのオーディション番組で、女性はただ一人も優勝できなかった。二人の女性候補中、ペ・スジョンが半歩ほど有力に見えるが、初めての女性優勝者を出すためには二人とも、ク・チャミョンという強力なパワーボーカルの壁を越えなければならない。

・三人とも個性的なボーカルの突出した美しさを持っている点が興味深い。今シーズンの「偉大なる誕生」は、ボーカルの真剣勝負のような感じを与える。考えてみれば、大衆音楽の核心こそボーカルではないだろうか。

・人間が作ったすべての楽器は、人間の声を指向する。舞台の中心に人間の声が位置しているのは決して偶然でない。自分の声を持つことができなければ、偉大な音楽家になることができてもスターにはならない。大衆音楽史は魅力的なボーカリストの歴史なのだ。

・もちろん、立派な声の資質だけでは、優れたボーカリストになれない。自身のボーカルを極大化できる曲を作ることができるとか、そんな作曲家をパートナーとすることができる幸運がなければならない。何よりも、骨を削る継続的な訓練が伴わなければならない。そして、素晴らしい資質を土台に多様な表現を駆使できる能力を揃えなければ生命力を保存しにくい。それにもかかわらず、私たちが最も普遍的に容易に魅了されるボーカルは、やはり「熱唱派」と称する激情的なボーカル(歌手)たちだ。

・この熱唱派の頂点には、1980年代韓国大衆音楽史を支配して、まだ相変らず堂々と王座の栄誉を守っているチョー・ヨンピルとイ・ソンヒが位置している。「国民歌手」あるいは「歌王」と遇されるチョー・ヨンピルだからこそとしても、相対的に生命が短い女性音楽家たちの限界を考えると、イ・ソンヒが30年近く自身の座を守っていることに対して、脱帽して敬意を表わしても決して過言ではないと考える。 

・1980年代に、主にTVを中心に活躍したイ・ソンヒの場合、「ミス・ダイナマイト」(?)という愛称を持った米国の女性ロッカーのパット・ベネター(Pat Benatar、1953年~)に決して引けを取らないパワーを誇り、10代の少年だけでなく少女ファンたちの視線を集結させた。彼女は、「愛が散るこの場所(사랑이 지는 이 자리)」や「いつもあなたを(나 항상 그대를)」のようなヒットナンバーでも分かるように、パワーの裏に隠れた繊細な感受性を表現している途方もない威力を発揮した。それが、当時のハイ・ティーンには、これ以上望むことがない贈り物だったわけだ。不惑の峠を越えても、イ・ソンヒは2005年の意欲的なアルバム「因縁(인연)」(13集所収)が見せたように、昨日の力に人生の「五欲七情(오욕칠정:人間本来持つ情と欲)」を包摂する円熟味まで加え、第2の全盛期を開く万全の体制を整えた。

・まさにこのイ・ソンヒがメンター(指導者)制を採用している「偉大なる誕生2」で、トップ3中の二人、ペ・スジョンとク・チャミョンのメンターであるという事実は真に興味深い。もし、今週に広がるトップ3のバトルで、チョン・ウジンが脱落するならば(この間の点数を見るならばとても有力な状況だ)、メンターの二人の弟子が優勝を決める珍しい風景を私たちは視聴することになるだろう。 

・偉大なボーカリストたちはいつも、既存の芸術史を形成してきた多くの境界のスケールを革新的に越えてきた。そして私たちは、その中で人生の驚異と癒しを与えられる。