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2025年12月11日木曜日

むくろ

動物への愛情が、いまほど語られることのなかった時代、子どもたちは怖いもの見たさに探検に出かけた。近所の大きな土手の横腹に穴蔵があって、そこに山羊の死体があるというのだ。入り口まで近づいたが、暗闇の中をのぞく勇気がなかった。というのも、入って左に曲がって、右奥に空洞があった。
なぜ山羊なのか、推測だが、土手の上で牛を飼っている農家があったので、勝手に連想したのかもしれない。

何度か探検をチャレンジするうち、ついに穴蔵に潜り込んだ。入り口から微かに差し込む明かりを頼りに進んだ。足元にはゴツゴツした石ころが転がっていて、壁も粗削りのまま、随分大きな空洞だった。もちろん、山羊の姿はなかった。さらに奥へ進むと、土手を突き抜けて小さな出口に達した。それを見極めた瞬間、ホッとして力が抜けた。誰からともなく、そこが「防空壕」跡だったと聞いた。

小学校の南に小さな貯水池があって、周りを雑草と木立に囲まれた、子どもたちの探検場所だった。あるとき、友だちから、そこに犬の死骸があると聞いて、みなで出かけた。夏の日差しを受けた遺体が、草むらに横たわっているのを見つけた。好奇心のまま近づくと、辺りに異臭が立ち込めていた。生き物は、皮膚の薄い部分から白骨化するのを知った。動転して、誰も口をきかず、その場を逃げるように去った。

むかしは、動物に対する尊厳が薄く、草はらに簡単に遺棄したのだろう。あちこちで、動物のむくろを目にすることがあった。