図書館で、「文芸春秋」(9月号)掲載の、第143回芥川賞受賞作「乙女の密告」(赤染晶子)を一気読みしようとしていたら閉館のため中断し、書店で同誌を購入して駅前のモスバーガーで読了。
京都にある外国語大学ドイツ語学科の女子大生のものがたりで、短いセンテンスはまるで、ハードボイルドではなくて、学園少女マンガの吹き出しのようでテンポがよい。ものがたりの時制は錯綜することなくリニアに進み、ドイツ語スピーチコンテストにいたる過程が主軸であり、登場人物は随分とエキセントリックなキャラクターばかりである。
ところで、ものがたりにはバックグラウンド・プロセスがあって、「アンネの日記」のある一日の記述の解釈なのだ。少女マンガのような展開は、最終、アンネ・フランクの日記を通じて、主人公がアイデンティティーや他者について理解を獲得していくことになる。
なお、この小説について振り子の大きな「芥川賞選評」は、小説読後に読んだほうがよいだろう。ちなみに、「アンネの日記」は未読である。それから、<少女マンガのような>と述べたが、少女マンガについては勝手な印象しかない・・・けれど。