子どものころ、祖母が干し柿を送ってくれたものだ。実を固く縮ませた干し柿が木箱にぎっしり入っていた。考えてみれば、手間をかけ大量に作ってくれたのだと気付く。しかもそれぞれの孫たちのために。
おやつに合わせて与えられたが、遊びのついでに一つ、木箱の前を通りしなに一つ、そんな調子で気の向くままだまって口にしていた。その味が今も忘れられない。
当時、輸送の木箱は郵送ではなくて、日通(日本通運)が扱っていた。駅に隣接した日通の事務所まで取りに行くことが必要だった、宅配便なんて便利なものがない時代だ。
どうやって自宅に運んだのか記憶にない。祖母と干し柿を結んでくれた親の手間もあったなんて知らずにいた。
今では、店頭に干し柿が並んでいるが、祖母手作りのものにかなうはずがない。