115年前のきょう、「真白き富士の根」の歌に語り継がれる悲しい出来事が起こった。
「真白き富士の根」の歌について「唱歌・童謡ものがたり」(読売新聞文化部、岩波現代文庫: 以下同書を参照して記述)は、「このテーマとなった事件が起きたのは、一九一〇年(明治四十三年)一月二十三日。逗子開成中学の生徒ら十二人の乗ったボートが、江の島と逗子の中間の七里ヶ浜の沖で転覆し、全員が死亡するという悲惨な事故だった」と記している。
事故後に同中学校の校庭で大法要が行なわれ、姉妹校の鎌倉女学校の生徒たちにより、女学校(数学)教師の三角錫子作詞によるこの歌が歌われたという。(この歌のWikipediaにある「歌詞について」の記述内容には、さすがに別論かつ出来過ぎた感がする・・・そもそもWikipediaの書き出しに、歌のジャンルを「歌謡曲」とするなどから、全体に臭いが漂う)
彼女は、平塚らいてうの女性運動に共鳴した運動家でもあったという・・・抽象論ではなく、家事の実践的改善にもかかわった。
ところで、同歌の作曲者について、著名な音楽評論家による混乱があったようで、原曲の讃美歌の曲名「Garden(天の園)」をあててしまったようだ。後に、正式にジェレミー・インガルス(Jeremiah Ingalls)と判明する・・・そのいきさつについて、上掲書やWikipediaなどに触れられている。
「真白き富士の根」歌詞全文(← Wikipediaより)
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真白き富士の嶺、緑の江の島
仰ぎ見るも、今は涙
歸らぬ十二の雄々しきみたまに
捧げまつる、胸と心
ボートは沈みぬ、千尋(ちひろ)の海原(うなばら)
風も浪も小(ち)さき腕(かいな)に
力も尽き果て、呼ぶ名は父母
恨みは深し、七里ヶ浜辺
み雪は咽(むせ)びぬ、風さえ騒ぎて
月も星も、影を潜(ひそ)め
みたまよ何処(いずこ)に迷いておわすか
歸れ早く、母の胸に
みそらにかがやく、朝日のみ光り
暗(やみ)に沈む、親の心
黄金(こがね)も宝も、何にし集めん
神よ早く、我も召せよ。
雲間に昇りし、昨日の月影
今は見えぬ、人の姿
悲しさあまりて、寝られぬ枕に
響く波の、音も高し
帰らぬ浪路に、友呼ぶ千鳥に
我も恋し、失(う)せし人よ
尽きせぬ恨みに、泣くねは共々(ともども)
今日も明日も、かくてとわに
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■ Youtube(登録: 水沼壽通)
「真白き富士の根」
https://www.youtube.com/watch?v=Ldt-eYK6oUw
■ Youtube(登録: Adam Miller)← 讃美歌より
「The Garden Hymn (Southern Harmony #90)」
https://www.youtube.com/watch?v=Qel-_Ykp7Xs