日本でも取り上げられることの多い韓国の女流作家申京淑(신경숙、1963年1月12日~)の作品について、ある問題が提起された。文学とは永遠に縁のない、この素人にとっても、耳を疑うできごと、衝撃だ。
(本ブログ関連:”申京淑”)
NEWSIS/朝鮮日報日本語版の、以下の記事、「申京淑の『伝説』は三島由紀夫『憂国』を盗作」(2015/06/17 11:31)には驚かされた。三島由紀夫の作品を・・・よりによって。
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「申京淑『伝説』は三島由紀夫『憂国』を盗作」 - 韓国人作家が疑惑提起
韓国を代表する小説家、申京淑(シン・ギョンスク)氏(52)が作家の三島由紀夫(1925-70年)の作品を盗作したとする主張が提起された。
小説家で詩人でもあるイ・ウンジュン(이응준、1970年~)氏(45)は16日、インターネット新聞のハフィントンポスト韓国版で、申氏の短編小説『伝説』(1996年)の一部が三島由紀夫の短編小説『憂国』(韓国で83年に発刊)を盗用していると主張した。イ氏が盗用の疑いを提起した部分は以下の箇所だ。
▼ (三島由紀夫『憂国』韓国語版)
「二人とも実に健康な若い肉体の所有者だったため、彼らの夜は激しかった。夜だけでなく、訓練を終えてほこりだらけの軍服を脱ぐ間さえもどかしく、帰宅するなり妻をその場に押し倒すことが一度や二度ではなかった。麗子もよく応えた。最初の夜を過ごしてから1カ月たつかたたないうちに、すでに麗子は喜びを知る体になり、中尉もそんな麗子の変化を喜んだ」
▼ (申京淑『伝説』)
「二人とも健康な肉体の持ち主だった。彼らの夜は激しかった。男は外から帰ってきて、ほこりがついた顔を洗いながらも、もどかしく急いで女を押し倒すのが常だった。最初の夜を過ごしてから2カ月余り、女はすでに喜びを知る体になった。女の清逸な美しさの中に官能はかぐわしく、豊かに染み込んだ。その成熟さは歌を歌う女の声にも豊潤に染みわたり、今や女が歌を歌っているのではなく歌が女に吸われてくるようだった。女の変化を一番喜んだのは、もちろん男だった」
イ(・ウンジュン)氏は「三島由紀夫『憂国』の盗作は、小説家が特定分野の専門知識を小説の中で説明したり、表現したりするために小説以外の文献の内容を地の文や登場人物の対話中で活用するといった、いわゆる『小説化作業』の結果では決してない」と指摘。プロの作家としては到底認められない、明らかな「作品の窃盗行為」だとした。
続けて、申氏の小説はさまざまな言語に翻訳されて、海外で一定の成果を収めているとしながら、「もし盗作がニューヨークやパリ、英国に伝わったらどうなるか。日本の文筆家や大衆がこの事実を知ったらどうなるか。これは隠そうとしても隠されるものではなく、隠せば隠すほど悪臭を放つ韓国文学の恥だ」と強調した。
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ちなみに、中央日報の記事、「申京淑、三島由紀夫作品 盗作した」(6/17)は、もう一歩踏み込んでいて、彼女のこの行為は(問題提起者によれば)、2000年秋からのことであるとか、韓国文壇の「沈黙のカルテル」、巨大出版社の社長と編集部の操縦、とまで書かれている。
この情報の発端となった、ハフィントンポスト韓国版の、小説家で詩人でもあるイ・ウンジュンの長々とした内容「偶像の闇、文学の堕落 | 申京淑の三島由紀夫盗作」(6/16)は、申京淑の人間・夫婦関係も含めて、もっと厳しい韓国風の表現がある。・・・韓国文人たちの「沈黙の共犯」と。
(資料)上記ハフィントンポスト韓国版掲載
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▼ (三島由紀夫『憂国』韓国語版)
두 사람 다 실로 건강한 젊은 육체의 소유자였던 탓으로 그들의 밤은 격렬했다. 밤뿐만 아니라 훈련을 마치고 흙먼지투성이의 군복을 벗는 동안마저 안타까와하면서 집에 오자마자 아내를 그 자리에 쓰러뜨리는 일이 한두 번이 아니었다. 레이코도 잘 응했다. 첫날밤을 지낸 지 한 달이 넘었을까 말까 할 때 벌써 레이코는 기쁨을 아는 몸이 되었고, 중위도 그런 레이코의 변화를 기뻐하였다.
─ 三島由紀夫、 キム・フラン訳, 「우국(憂國)」, 『金閣寺, 憂國, 宴会は終わって(宴のあと)』, 主友 世界文学20, 株式会社主友, P.233. (1983年1月25日 初版印刷, 1983年1月30日 初版発行)
▼ (申京淑『伝説』)
두 사람 다 건강한 육체의 주인들이었다. 그들의 밤은 격렬하였다. 남자는 바깥에서 돌아와 흙먼지 묻은 얼굴을 씻다가도 뭔가를 안타까워하며 서둘러 여자를 쓰러뜨리는 일이 매번이었다. 첫날밤을 가진 뒤 두 달 남짓, 여자는 벌써 기쁨을 아는 몸이 되었다. 여자의 청일한 아름다움 속으로 관능은 향기롭고 풍요롭게 배어들었다. 그 무르익음은 노래를 부르는 여자의 목소리 속으로도 기름지게 스며들어 이젠 여자가 노래를 부르는 게 아니라 노래가 여자에게 빨려오는 듯했다. 여자의 변화를 가장 기뻐한 건 물론 남자였다.
─ 申京淑, 「伝説(전설)」, 『昔、家を出るとき(오래전 집을 떠날 때)』, 創作と批評社, P.240-241. (初出1994年⇒1996年9月25日 初版発行, 後に 2005年8月1日 同じ出版社として名(創作と批評社)を圧縮して改名した「創批(창비)」で 『ジャガイモを食べる人々(감자 먹는 사람들)』と小説集題名だけ変えて再出版された)
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