勧善懲悪に見慣れたテレビ番組「ウルトラマン」の、第23話「故郷は地球」(1966年12月18日)に登場した「ジャミラ」*は驚愕だった。その回は、いつもながらの宇宙怪獣の地球襲撃と、それに対するウルトラマンの反撃という分かりやすい図式が崩れ、子ども番組ながら正義って何だろう?と考えさせるものだった。
(*)ジャミラの名は、Wikipediaによれば「アルジェリアの独立運動家ジャミラ・ブーパシャから頂いたもの」という。そういえば、新宿ミラノ座で「『アルジェの戦い』(原題:La battaglia di Algeri、1966年9月8日イタリアで公開[日本公開1967年2月25日])」を見た記憶がある。
宇宙に放置、見捨てられた宇宙飛行士が、恨みを積もらせて怪獣に変身し、地球を破壊しに戻ってくるのだ。ウルトラマンと戦いの結果、ついに弱点の水に溶かされ縮んでいく。断末魔の叫び声はやがて、赤子のように弱々しい泣き声に変わる。恨みも悲しみも全てを受け入れる母なる大地に吸収されていくのだろうけれど・・・。
けれど、ジャミラが一体何者であったのかという事実について、巨大な力は闇に葬ってしまう。これって子ども番組の展開なのかと感心したものだ。
それ以前にも、子ども向けのオーストラリア開拓時代を扱ったテレビドラマで、人間の矛盾を感じさせるものを見た。「フィップラッシュ」(1962年)に登場する犯罪者が、実は元牧師だったのだ。
世界は、正義と悪に二分されるだけではないってことを教えてくれる。正義と悪は、容易に入れ替ってしまうのだから。