山の人びとに伝わる、ある意味、民話の原初的な伝承を伝えるシリーズ「山怪(やまかい)」(山と渓谷社)がある。著者 田中康弘氏の誠実なフィールドワークによる聞き書き*を通して、山で生活した人びとの精神世界まで知ることのできる貴重なシリーズだ。
(*)民話の聞き書きの原則: 時期、採集地、話者(人名・語り口)を具体的に記す。
(本ブログ関連:”山怪”)
特に印象に残った、田中氏の伝承の誕生についての解説がある。以前、本ブログに記した「『雪国の民話の誕生』田中康弘氏の説明」(2024年12月19日)だ。再掲する。
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「冬山において 山怪はどのように育まれていったのか」、雪国の生活から民話がどのように誕生したかについて語られる。何度も足を運ばれた方だけに、とても説得力があり納得させていただいた。
・むかしの囲炉裏ばたは、作業場であり爺さんや婆さん、母や孫たちが囲む場所であった。(父親は出稼ぎに)
ー めいめいが自分の時間と空間を持つ今の時代とは違って、
・話のタネが植えられて、それが何代も繰り返される。(おもに祖父母が語り手となって)
ー 話は育てられ、ききやすい言い伝えや伝承などとなり民話が誕生する。
ー 記憶は語られることにより残る。
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今回(7/1)、第五巻目の「山怪 青 山人が語る不思議な話」が出された・・・惜しむらく、著者はこれをシリーズ最終巻「ラスト山怪」と語られている。理由は、語れる人が老い、ご自身も体力的に採話が難しくなったようだ。
「山怪 青」の発刊にあたって、田中氏が関連の話をYoutubeで語られている。
ー 願いを聞き入れる神と違い、原初には自然の驚異・恐れる神があったのではないか。
■ Youtube(登録: オカルトエンタメ大学)
①「『山怪』最新刊から初出し! 祟り神の怖い話を田中康弘先生が語ります。」
ー https://www.youtube.com/watch?v=Jz12fdkmg20
②「最後の【山怪】授業!日本全国で相次ぐ妖狐の祟り・怖い話を田中康弘先生が語ります。」
ー https://www.youtube.com/watch?v=pqR9xNBBrd8
※ 狐の話を聞かないのは四国。かわりに悪さをするのは狸。何にしろ、言い訳に使える身近な動物だからだろうという。
※ 同Youtube番組から、田中氏は最後の回になった・・・別の機会に聞かせていただきたい。