冬から春にかけて白や黄色の花を咲を咲かせる「スイセン(水仙)」には、スイセンが含まれる植物分類上の「科」に、彼岸の秋(9~10月)にかけて朱紅色の花を咲かす「ヒガンバナ(彼岸花)」がいる。
公園併設の「自然観察園」の西奥に、スイセンとヒガンバナが隣接して生育している。ともに群生して咲き、見事な光景を見せる。特にスイセンは1月ころが花盛りと、園の野草管理をするボランティアの方から聞いた。
中国の「水仙」の文字を音読みしたスイセンは雪景色が似合う。中国明代の「
月令廣義」(馮應京著)に、冬に咲く四種の花の(文人画の)画題として「雪中四友」があり、「黄梅」、「ロウ梅」、「水仙」、「山茶花」をあげているという。
スイセンには「雪中花」という風雅な別名がある。ネットで「雪中花 和菓子」と検索すると、全国の和菓子店が競うように、練りきりで水仙の花弁を或いは雪景色に咲く様を見立て造形している。水仙の姿を重ねて菓子にしあげる和菓子伝統の表現力、巧みさを感じる。
ところで、スイセン(Narcissus、原産 地中海地域)とヒガンバナ(Spider lily、原産 中国)には次のような共通した特徴がある。
・日本での増殖では、スイセンは一般に種がつきにくい(人工的に3倍体品種である)ため、球根で増やす必要がある。またヒガンバナは自然に種子を作れない染色体(3倍体)のため、同じく人手による株分け(球根の分球)する。
・ともに、鱗茎に「リコリン」(C16H17NO4、アルカロイドの一種)の毒性を持つという。
東洋
① Wikipedia: 「水仙」より抜粋
仙人の格づけに、最上位の「天仙」があり、下位に「地仙」、さらに「尸解仙」とつづく。
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和名スイセンという名は、中国での呼び名「水仙」を音読みしたもの*。中国で名付けられた漢名の「水仙」は、「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」という中国の古典**に由来する。水辺に育ち、仙人のように寿命が長く、清らかなという意味から名付けられたとされる。
(* )出典:『効きめと使い方がひと目でわかる 薬草健康法』( 田中孝治著、講談社)
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(**)南京师大学报(社会科学版)「论中国古代的水仙文学」(高峰著、2008年1月1日)
唐代
司馬承禎の「天隐子・神解章」の言葉として紹介されている。
ー http://www.zhiwutong.com/news/2008-01/27226.htm
(参考)「<論説>道教の神仙観念の一考察 : 尸解仙について」(宮川尚志、京都大学、1971)
ー https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/bitstream/2433/238019/1/shirin_054_1_29.pdf
西洋
スイセンの学名「Narcissus tazetta」の Narcissus から
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・(スイセンの)属名である Narcissus という学名は、ギリシャ神話に登場する美少年ナルキッソスに由来する*。ギリシャ神話によれば、ニンフのエコーは愛する美少年ナルキッソス(Narcissos)に振り向いてもらうことができなかったので痩せ細り、声だけの存在になってしまう。エコーを哀れんだ女神ネメシスは、池に映った自らの姿に心酔しているナルキッソスをスイセンの花にしたという*。
(*)大嶋敏昭監修「花色でひける山野草・高山植物」(成美堂出版、2002年)
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スイセンの英語名は「Narcissus」あるいは「daffodil」(フォ-クソング「七つの水仙」の曲名は、”Seven daffodils”)
② Wikipedia: 「
エーコー」より抜粋、エーコーが声を失った理由
森のニンフ(精霊)であるエーコーは、一般に「エコー」と語られ、文字通りギリシア語で木霊・反響などを意味する。
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・オウィディウスの『変身物語』*によれば、(ギリシャ神話の主神)ゼウスの浮気相手となった山のニンフたちを助けるために、エーコーはゼウスの妻ヘーラーを相手に長話をしつづけたことがあった。このためにエーコーはヘーラーの怒りを買い、自分からは話かけることができず、誰かが話した言葉を繰り返すことしかできないようにされた。
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(*)古代ローマの詩人、原題「Metamorphōsēs」
薬効
① 小冊子「植物知識」(牧野富太郎)の「スイセン」の項より抜粋
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Narcissusは麻痺の意
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② 熊本大学薬学部 「今月の薬用植物」サイト
「すいせん(Narcissus tazetta L. var. chinensis Roem.) ひがんばな科(Amaryllidaceae)」(2003年2月) ・・・より抜粋
-http://www.pharm.kumamoto-u.ac.jp/flower/H1502.html
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・ラテン名の「Narcissus」はギリシャ神話で美少年と言われるナルキソス(Narkissos)からきたとも言われていますが,ギリシャ語のnarkeという『麻痺させる,昏睡,無気力』意味の語から由来とされています.スイセンの鱗茎は神経を麻痺させるアルカロイド(Lycorine等)が含まれています.narkeは英語の麻酔剤narcoticの語源です.
・「tazzeta」はイタリア語の小さなコ-ヒ-カップの意味です.副花冠の形が似ているからでしょうか.そんな思いでよく観るとメリ-ゴ-ランドのコ-ヒ-カップに似ている夢のある花です.
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(追記)野鳥「キビタキ」
探鳥会のベテランの方から日々配信される会員向けメール(4/19)に、野鳥「キビタキ」の初認報告があった。オスは、頭部が黒く腹にかけて橙色から黄色になり、そのさえずりが明るい。そこで、ネット上の野鳥情報サイトも検索してみた。
「サントリーの愛鳥活動トップ」サイト、「日本の鳥百科」の「キビタキ」の項
https://www.suntory.co.jp/eco/birds/encyclopedia/detail/1414.html
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学名ナルシシナ(Ficedula narcissina)、英語ではナルシッサス・フライキャッチャー。ともに「水仙」の意味で、人の目に鮮烈に映るかを物語っていると思います。と同時に、キビタキには、自分の姿の美しさに見とれて、泉のほとりで水仙になってしまったというギリシャ神話の美少年ナルシスの姿を連想させるではありませんか。
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