KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(12/12)に、人物シリーズ58回目として、弦楽器コムンゴ(弦琴、거문고)奏者であり作曲家の鄭大錫(チョン・デソク、정대석)(1950年~)を紹介した。
(本ブログ関連:"コムンゴ")
まず、弦楽器コムンゴの復習から始まった。
・ソンビ(선비、高尚博識な人士)たちが好んだといわれる弦楽器である。
・楽器の胴は、桐と栗の木を張り合わせた、長さ約1m50cmほどの琴に似た構造で、カヤグム(伽耶琴、가야금)に似る。ただし、正楽カヤグムは12本の弦を指で直接奏するのに対し、コムンゴは6本の弦を指とスルテ(술대、細く短い竹ばち)を使って奏する。そのためカヤグムより荒々しい音を出すことができる。
・胴上に取り付けた、16個の木の板のクェ(괘)というフレット(fret)の上に、絹糸をより合わせて作った6弦を張る。演奏時、弦を≪右手≫に持ったスルテで叩いたり、すくったりして音を出すのが特徴。また≪左手≫で弦をクェの上で押したり揺さぶったりしていろいろな表現をする。
▼鄭大錫の作曲、コムンゴ独奏による「無影塔(ムヨンタプ、무영탑)」第4楽章を聴く。夫を思い、妻を思った夫婦の悲劇と岩に託したその石仏師の純愛の伝説か・・・影をなくした塔。ともあれ、とても親和的で、風が通り抜けるようないい感じがする。
・ソンビたちの楽器として、世俗的な曲を奏することが避けられたため、新しく作曲しても、ソンビ風のゆっくりとした落ち着いた音楽にするようにと心がけられてきた。
ここに変革をもたらしたのが鄭大錫で、上記「無影塔」の演奏では、新しい技法を取り入れて、速いテンポで、カヤグムのように指で弦を弾(はじ)いたり、クェをスルテで叩いたり演奏している・・・とのこと。
・・・解説の岸さんの思い入れが伝わってきます。
次のように鄭大錫のプロフィールが紹介された
・1950年12月24日 ソウルに生まれる。
・国家による学費支援のある国楽高等学校でコムンゴを専攻。家庭の事情で大学進学を断念するも独学で作曲を勉強し、その後、壇国大学に進む。卒業後、KBS国楽管弦楽団に在籍し演奏活動をし、現在、ソウル大学校音楽大学国楽科 国楽器楽(琴)担当教授。
▼鄭大錫のコムンゴ独奏による「月暈(タルムリ、달무리)」第3楽章を聴く。周りをにじむようにして輪をつくる月の暈(かさ)の明かりが、滴になって地を照らす様か・・・これも新しい技法を駆使しているのだろう。
・・・楽器を身のそばに置けない音楽学生だったなんて・・・そんな時代を経たという克己の方のようだ。
▼鄭大錫のコムンゴ独奏による「水里斎(スリチェ、수리재)」第3楽章を聴く。漢江の畔、藁葺き家の趣を表現したもの・・・とのこと。流れに揺れて川面がきらめく様か。抑制が効いて涼し気さえ感じる。
(付記)
フュージョン、クロスオーバー、コラボレーション、ワールド何々・・・ではない、伝統を継承された本当の意味の新しい国楽なんでしょうね。とてもいい気分になれたのはどうしてでしょう。