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2013年1月8日火曜日

KBS WORLD「国楽の世界へ」 金静子

KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(1/2)に、人物シリーズ61回目として、弦楽器カヤグム(伽耶琴가야금)の第一人者、金静子(キム・チョンジャ、김정자、1942年4月16日~)を紹介した。新年最初の放送である。

まず、カヤグムにまつわる逸話の紹介から始まった。
・カヤグムの故郷、伽耶が滅亡した際、同国の楽師ウルグ(于勒、우륵)はカヤグムを抱えて新羅に亡命し、新羅の若い音楽家たちにカヤグム音楽を伝承した。ある日、ウルグは、弟子たちが思いを込めて編曲したものを聞き、初め腹を立てたが、聴き終えて「楽しげだが無節制ではなく、悲しみもあるが悲痛ではない。正しい音楽だと言えるだろう。お前たちはこの音楽を王様の前で演奏するがいい」といった。

▼金静子の演奏による「霊山会相(ヨンサンフェサン、영산회상)」の中から「相霊山/上霊山(サンリョンサン(상령산)」を聴く。弦の音と音の空隙に不思議な余韻があって、それ自体ひとつの響きのよう。まさに東洋的な余白の美といえる。

・カヤグムは、朝鮮時代後期から多様な形に改良され、現代ではいくつもの種類がある。正しい音楽と書く「チョンアク(正楽、정악」)は、身分の高いソンビたちの風流として伽耶時代から伝えられて、今でも当時のメロディーを維持しながら演奏され、そこに昔の人々の音楽に対する思想もしっかりと込められている。

次のように金静子の進んだ道が紹介された。
・1942年 生まれる。
・1960年 ソウル大学に入学して初めてカヤグムを始める。当時、まだ近代化の波の真っ只中にあり、伝統文化は古びたもの、切り捨てなくてはならないものと見なされていた。
国楽科を設立して、国楽を後世に残すため努力した師匠イ・ヘグの姿に心を打たれ、カヤグムに対する関心と愛情をわかせた。

▼金静子の演奏による「男唱歌曲(남창가곡)」の中から「初数大葉(초수대엽)」を聴く。これもまた穏やかで粛然とした音色だ。むしろ余白に音を聴くようなものか・・・。

・大学でカヤグム専攻当時、ソンビたちが雑念を抑えるために演奏したという理想的で冷静な正楽を、生涯をかけて演奏すると心にきめた。
・長年、ソウル大学国楽科で学生たちの指導し、今も演奏活動を行っている。正楽を正しく次の世代に伝えていくため、色々な大学で教授として学生の指導にあたっている。
自身と同じような研究者による「正農楽会(정농악회)」(1977年)を発起した経験もある。正農楽会は人間の心を鎮める正しい音楽で畑を耕そうという意味が込められた名前で、正しい音楽で正しい人々を育てようという趣旨があるという。

▼金静子の演奏による「ウットドゥリ(웃도드리)」を聴く。優雅な調べだ。正楽の成立について知りたい・・・古楽というよりは、間の取り方に新しいものを感じる。