▼▼ 青字下線付語句のリンク先は、マウス右クリック+<新しいタブ>で進んでください。(本ブログ関連)の最下段に「次の投稿ホーム」があるとき次ページがあります。▼▼

2019年4月25日木曜日

バスクと鉄

以前、バスク語教室の第3回目で「バスク文化」が紹介された。その回、先生がスペイン・バスク州ビスカヤ県の「ビルバオ」地域の街歩きガイドBOOKを配られた。おしゃれなカラー写真と図版で解説・構成された上質紙の冊子だ。

(本ブログ関連:”バスク語”)

ビルバオ地域は、かつて県内で産出された鉄鉱石をもとに、製鉄業でスペインの重要な地位を占めたという。Wikipediaによれば、「高品質の鉄がヨーロッパ中に輸出された。19世紀後半まで製鉄業は発展し続け、資源はビルバオに富をもたらした」という。上記の旅行ガイドは、かつての工業都市を脱して、文化都市への様変わりを宣言しているようだ。

ところで、国立国会図書館デジタルコレクションに、「民族形成と鉄の文明」*(宍戸儀一著、道統社、昭和17年)がデジタル保存・公開されている。その記述に、「ダクチリと原バスク人」の項があり、原バスク人と鉄の関係について触れている。素人の覗き見でしかなく、この書全体でどのような位置づけされているのかもよく知らないが、次のような記述が気になった。・・・これが、現在のバスク人とどうつながるか、つながらないかの知識はないけれど、バスク人と鉄の関係がうかがえたような気がした。
(*) 民族形成と鉄の文明: http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1060237

------------------------------------------------------
ヒューウィット(Hewitt)**によれば、ダクチル(dactyl***)族はフリギア(Phrygia)に於いてフィン系の原バスク人と合一したといふ。
・・・ヒューウィット説に従えば、彼等は、地中海の西端に辿り着いてエブロ河(Ebro)を母川とするイベリア・バスク人になった。この説の当否は問題であるが、コウカサス南麓のエベル(Eber)の国やフリギア辺境のイブレーズ町(Ibreez)とイベリア・バスク人との間になんらかの所縁だけはあったのであらう。
原バスク人は、ヒューウィットによって採鉱冶金者なる原フィン人と同一視される。しかるに、フィン語では金属はもともとバスキ(vaski)と呼ばれた。
------------------------------------------------------
(**) James Francis Hewitt: ”The Ruling Races Of Prehistoric Times”
           https://archive.org/details/in.ernet.dli.2015.283692/page/n385
(***)ダクチル:ギリシャ神話に登場、metalworkingを人に授ける

地図:「民族形成と鉄の文明」所載
フリギア:現トルコ中央部














ヒューウィットの説にほぼ負った記述であるため、妄想世界に引き込まれて行きそうな危惧がある。果たして、この説がどうなのか自信ないし、現在の研究者たちにどう判断、評価されているかも知らない。ローマと対峙したというバスク人の祖先が、ギリシャ系とフィン系が合一したというのは夢がある。
(ちなみに、フィンランド語で「vaski」は「真鍮」。ただし「鉄」は「rauta」)

(本ブログ関連:”山師”)