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2017年6月25日日曜日

ヘルムの町の穴掘り

いわれることに囚人を精神的に追いつめる穴掘り作業がある。掘り出した土を元の穴に埋め戻すという作業を繰り返させる。意味の無い、実りの無い作業の強要は、囚人の人間性を奪うわけで、その残酷さは容易に想像がつく。本当にそんなことを課していたか知らないけれど、物語の一場面なら象徴的で分かりやすい。

穴掘りを、悪意ではなく正当な作業と信じたらどうなるだろう。はたから見れば、当然おかしなことに違いない。そう、ヘルムの町の住人が、それをやってくれるのだ。
今回は「民話の本」シリーズの「ユダヤの民話」(ピンハス・サデー著、秦剛平訳、青土社)に所収の「ヘルムの賢者たち」だ。ここには他に3つの話題もある。(一昨日(6/23)記した、「イディッシュの民話」は同シリーズのもので訳者も同じだ)

(本ブログ関連:”ヘルム”)

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その知恵で知られていたヘルムの住民たちが自分たちの町をつくることにしたとき、彼らはまず基礎を掘りはじめた。突然、彼らのひとりが叫んだ。「兄弟諸君! われわれはここで掘って掘って掘りまくっているが、この土の山はどうするつもりなのだ?」そこでヘルムの賢者たちは頭をひねったあげくに宣言した。「われわれは次のような手順を踏む。まず大きな穴を掘り、そこにこの土山を崩して埋める。」
「だがその穴を掘ってできた土山はどうするんだ?」と執拗に質問する者がいた。
ヘルムの賢者たちは考え続けたあげくに言った。「われわれはもうひとつ穴を掘り、その中に最初の穴から出た土を埋める。」
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「賢者たち」として登場するひとびとは、町(村)のルールを定める決裁者であり、「長老たち」と記す読み物(童話)もある・・・、翻訳上の選択なのか分からないけれど。今回も一種の「いれこ構造」といったおかしさがある。とぼけた感じがたまらない。