歩いては時間の余りの緩やかさのため、自動車ではあっという間に過ぎるため、通り道の微妙な起伏は気付かぬものだ。そんなとき、自転車はペダルを漕ぐ足に、流れる景色を視る目にわずかな傾斜まで感じることができる。
自転車は、ほどほどに惰性で進む。坂道を上がるときは力が要るが、下るときは任せたまま。急な坂道になれば、その差は激しい。平たい道を進むときは、自分の力加減で速くも遅くもなる。景色の流れる速さも違ってくる。そして、止まる場所も自分で決めればよい。
イ・ソンヒの13集所収の「自転車(자전거)」(2005年)は、もしかしたら坂道も見ず、そして気付かず、ちょっとフラつかせながら想いだけで走っている自転車のよう。もったいないけれど、若いときは、いつだって主人公は自分ですから。チリリン。
(本ブログ関連:”自転車”)
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