ほんの一週間ほど前まで、冷蔵庫に水出し緑茶が入ったボトルを用意していた。それが、いまでは用済みとなり、洗浄して茶箪笥に仕舞っている。季節の変化に対して、生活の変化はいささか無情である。いまは、やかんで沸かした熱湯を魔法瓶にためて、熱い茶やコーヒーを当たり前のように飲んでいる。
子どものころ、父の会社の社宅に住んでいた。東京本社から人事異動に伴い転勤族がしきりに往来した。だから、少年仲間もよく替わった。あるとき、東京から来たばかりの友だちの家に行ったとき、きれいな容器に入れた、薄茶色で透明な熱いスープが出されたことがある。優雅な香りがして味わい深い初めての味覚だった。何だろうと思いながら飲み干した。後で知った、「コンソメスープ」の味だった。(後で考えると、はなたれ小僧たちに何でそんなものを出したのだろうと思う)
そのころ、汁物といえば、味噌汁、すまし汁、蕎麦・素麺のつゆくらいしか知らなかった。東京では、こんな洒落たものを飲んでいるのかと、子ども心に感心したものだ。
とはいえ、いまではコンソメスープは、顆粒や固形のインスタントなスープの素で代用している。正直なところ本物のコンソメスープを、どうやって作るのか考えたことはない。
いっぽう、味噌汁、すまし汁、蕎麦・素麺つゆについてはこだわりがあるけれど、そば屋で出されるような風味を代用できるインスタントなものに会ったことがない。ポット入りのものが販売されているが、全然違う。
やっぱり昆布と鰹節を使って、いちからやらねばならないのだろうか。