KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(4/23)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第53回として、「ジョギ(조기)」と総称される魚の「イシモチ取り唄(조기잡이 소리)」にまつわる話を紹介した。
(注) この回の「イシモチ(참조기)」は、K-Wikipediaによれば、学名Larimichthys polyactisと呼ばれる魚で、日本の水産総合研究センターの「水産生物情報データベース」では、魚名「キグチ」として「東シナ海に多い魚である」と図解している。
まず始めに、イシモチと漁民の関係を季節を通じて、次のように紹介された。
・今は、春夏秋冬中で最もよい季節かもしれない。きれいな花が咲き、木々も新緑を芽吹かせて美しい。こうした時期、農村、漁村も人手が足りない。特に、黄海道から全羅道に至る西海岸では、4月をイシモチの季節といい、「イシモチ」が大量に獲れる。
・全羅道七山の沿岸では、毎年、アンズの古木に花が咲くと、イシモチが来ると言う。また、イシモチを天日干しした「クルビ(굴비)」で有名な全羅南道霊光地方では、法聖浦(법성포)の入江の向かいの九岫山(구수산)にツツジが咲き出したら、イシモチ漁を始めた。済州島南西の暖かい海で冬を過ごしたイシモチは、春に北上を始め、3、4月頃に全羅道地方に至り、さらに4、5月には、黄海道延坪島(연평도)まで到達する。そのため漁民たちは、この季節が最も忙しい。
▼ 黄海道の「櫓を漕ぐ唄(노젓는 소리)」を聴く。勢いがあって力強い漁労歌・・・ああ海が眩しい。
次に、イシモチの習性と、ひとびとの伝承や生活への関わりについて、次のように解説された。
・イシモチは古来、高級魚として愛された。イシモチの漢字名「宗魚(종어)」は、宗家の「宗」と、「魚」を当て、魚中最上のものとされる。イシモチは、一般的に腹部が金色を帯びた「キグチ」を指し、干物を「クルビ」といい、祭祀の供えに欠かせない。
・古くイシモチに、4つの徳があるとされ、①移動する時期が正確にわかるという「禮」、②塩漬けしても曲がらないという「義」、③廉恥と恥じらいあるという「廉」、④汚らわしい所には行かないという「恥」というもの。チェサに供える理由に、後裔にこうした徳について学ばせる意もあった。
・イシモチは、産卵時期、独特な鳴き声をあげる。産卵場所に入ると、オスとメスが互いに自分の位置を知らせる求婚の信号と言われる。移動経路の、全羅道霊光の七山沿岸では、産卵時期に、イシモチの鳴き声で、村人夜、寝付けぬほど多かったという。
▼ 西道民謡「ペチギ(배치기)」を聴く。大漁歌もちょっと様式化されて表現・・・港の匂いが欲しい。
最後に、経済的な価値のあったイシモチ漁の盛衰について、次のように説明された。
・船を魚一杯にして大漁を祝う(上記)「ペチギ」唄を、船上でプンムル(=楽器の総称)を叩きながら歌った。漁師にとって、魚はまさに金だった。船一杯積んだイシモチに心弾んだろう。当時、網を投げれば、面白いほど獲れたイシモチ漁も、今や昔となった。様々な機械が開発され、海底をすっかりさらったため、漁をしながら歌う暇はない。
・名節の時期、中国産イシモチが韓国産と並んで高額で売られ、庶民たちに手が出ない高級魚となった。イシモチ漁の唄が失われたとき、漁村文化も同時に失われたと言える。
▼ 「延坪島難逢歌(연평도난봉가)」を聴く。以前も聴いた(劉智淑)が、今度(アリス)は物語風かな・・・。