玄関ドアを開けると、足元を一筋の蟻(アリ)の隊列が続いて、裏木戸の奥に進んでいるのが見える。彼らに気付いて以来、ときたま観察するが、その隊列が変わることはない。
蟻がどこへ向かっているのか、そして何をしているのかまで関心を深めることはないが、毎日ご苦労さま・・・といった感じでそのつど眺める。歳をとると、お互い同じ命を持っているんだなと、感じるようになった。
蟻について知らないし、蟻の方だって人間のことなんか知らないだろう。ときたまドア越しに出入りする人間の足裏に用心しているが、それ以外は無縁で、蟻は彼らなりの仕事に専念し励んでいるのだろう。
考えてみれば、玄関ドア下の隊列は一方向に進んでいるように見える・・・往路なのか、復路なのか、それとも行きは隊列を組み、帰りは三々五々バラバラに戻っているのだろうか。いつ始めて、いつ終わるのだろうか・・・休止はどんな風にしているのだろうか・・・多分、夜間は休んでいると思うが、どうだろう。
先日、玄関先のタイルの上に、仰向けに転がっていた小さなトカゲが、翌日は体が小さくなり、二日後には消えていた。多分、蟻たちが迂回して、運んで行ったのではないだろうか。命が、命を分け与えて循環していると思う。