昨日までの寒さは一体何だったのかと思うほど、今日は暖かだった。春らしい陽気に誘われて、上野にある国立西洋美術館で開催中の「ラファエロ(Raffaello)」展を見に行くことにした。
ルネッサンス期に、わずか37歳で生涯を終わらせたラファエロ・サンツィオ(1483-1520年)の作品展だが、同展によれば「ヨーロッパ以外では初となる大規模なラファエロ展」という。今までこのような特別展がなかったことにちょっと不思議な気がする。(ラファエロに対する評価の風潮がそうさせたのかもしれない)
(本ブログ関連:"ラファエロ")
上野駅の改札口を出て驚いた。小さな子ども連れが多いのだ。春休み?・・・地元の小学校のスケジュールを調べると「3月26日~4月5日までは春休み」とのこと・・・なるほど、もう春休みだったのか。子どもたちは、動物園に行くのかな。
ラファエロ展も観客が後を絶たないほど盛況だった。一部の絵の前では、人だかりして鑑賞がままならないものもあった。混雑時の音声ガイドは、鑑賞の流れにサオさすような気が・・・。
さて、今回の展示画のなかで、まず見たかったのは、作品「大公の聖母」(1505-1506年)だ。フィレンツェ時代に、レオナルド・ダビンチの「繊細な明暗法の影響を受けた」(ラファエロ展「カタログ」:p.76)もので、聖母の穏やかなまなざしに心安らぐ・・・慈愛と、そして未来への微かな不安まで感じる。
この絵の聖母子の背景は、後世に黒く塗りつぶされたというが違和感ない。そう思い込んでいるからだろうか、むしろ絵に落ち着きと静謐すら感じさせる。
北方ルネッサンス好きにとって、おやっという思う解説があった。作品「エリザベータ・ゴンザーガの肖像」(1504年頃)だ。ラファエロが生まれ育ったウルビーノの地に戻り、ウルビーノ公妃となったいささか権高さを漂わすエリザベータを描いたものだ。
「同時期のほかの画家と同様、ラファエロがウルビーノの宮廷でも人気を博していたフランドルの肖像画技法に高い関心を払っているが、その結果、背景に見える風景描写に注意を払うようになった」(同展「カタログ」:p.74)という。実際、あのゴツゴツした岩の雰囲気は、フランドルにあるというよりも、北方の画家がアルプス越えしてまでイタリアに学ぼうとしたとき、アルプスに至る道すがら見た山景ではないだろうかといつも思っているのだが。
フランドルの画法が、逆にイタリにも影響を与えていたというのは楽しい。
カタログの解説「ラファエロ像の変遷と偶像化の過程」(同展「カタログ」:p.34、渡辺晋輔)にも触れられているのだが、ラファエロの下絵を元に作られた版画「パリスの審判」(1513-1515年、マルカントニオ・ライモンディ)の人物配置がおもしろい。版画右下3人の人物配置が、発表時に道徳的に問題視されたマネの作品「草上の食事(昼食)」(1862-1863年)と同じだからだ。このモチーフは、古代のレリーフ以来使われたものだそうだが、どうやらモネの絵の強烈なインパクトから、版画の構図に目がいったというのが正解だろう。
そうそう、ラファエロの作品「自画像」(1504-1506年)はおなじみだ。