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2019年3月2日土曜日

狐の狡猾さ

このブログは、キツネについていろいろな伝承を採集している。「西洋中世奇譚集成 皇帝の閑暇」(ティルベリのゲルウァシウス(Gervasius Tilberiensis)、池上俊一訳、講談社学術文庫)に所収の「第68章 狐の狡猾さ」を転載させていただく。結論から言えば、だます者は、甘い汁を吸おうと近づき寄る者たちを、最後には丸めてポンと捨てるということか。

(本ブログ関連:”キツネ”)

翻訳者解説によれば、原本は、1209年~1214年にかけて書かれたもので、聖職者ゲルウァシウスが赴任地や旅先での見聞、知人から聞いた話、古典の奇話などをまとめたものという。皇帝のための気晴らし本というべきか。素人の関心からいえば、こんな話、あんな話とつづく。石の話もあって楽しい。

(下記に改行を加えました)
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狐の本性的狡猾(ずるがしこ)さについての話を耳にするとき、わたしどもは何より、この世ではもっと慎重に振る舞うべきことを学びます。

たとえばです、狐が蚤の激しい刺傷で痛がっているとき、かれは川辺にいって後ろ歩きをしながら尻尾の先を水に沈めます。すると蚤は水を感じて、キツネのからだのより乾燥した地帯に避難します。こうして徐々に尻からからだを湿してゆくあいだに、蚤たちは彼の鼻面の先まで這い登ってゆくことを余儀なくされます。

不幸な一隊が一旦唇まで到達するや、かれは口全体をペロッと舌なめずりします。そこで蚤は、あらかじめ狐が用意して口一杯に含んでいた麻屑か何か別の柔らかなものの中に突進してゆきます。狡賢い動物(狐)は、かれら(蚤)がほうほうの態で避難場所に逃げ込んだと感ずると、麻屑を吐き出し、水から上がってこの不衛生な災難から解放されるのです。
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