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2016年3月24日木曜日

「祇園小唄」

昔、時代劇俳優に高田浩吉がいた。彼が登場すると、銀幕がぱっと活気づく華やかさ、艶があった。しかも画面の中で歌って聞かせるのだ。LPレコードの記憶だろうけど、「伊豆の佐太郎」の「はいた草鞋(わらじ)に」のフレーズがいつまでも残っている。役者のイメージは、股旅ものだったが、過去の映画出演リストを見ると意外な感じがした。「伊豆の佐太郎」の歌詞の印象が余りにも大きかったからだろうか。

彼の娘に女優の高田美和がいる。彼女がカバーする、春に始まる歌、「祇園小唄」(昭和5年:1930年、作詞:長田幹彦、作曲:佐々紅華、歌唱:藤本二三吉)は、春夏秋冬に恋を歌う。今様にアレンジすることもなく、自流のイメージに合わせることもない、古風に歌い聴かせる。

春の京、霞に曇る東山、見上げれば登る月が見える。祇園の賑わい、過ぎ行く若者たちにも、「清水へ祇園をよぎる花月夜 こよひ逢ふ人みな美くしき」(与謝野晶子、歌集「みだれ髪」、1901年)。もしかしたら、京都の町に対する妄想かもしれない。(蛇足だが、朝日新書「京都ぎらい」(井上章一著)で、京都の町の別の一面が見えるような、見えないような・・・)

※ 「祇園小唄」(JASRAC No.024-0015-4 著作権消滅曲)


月はおぼろに 東山
霞む夜毎の かがり火に
夢もいざよう 紅桜
しのぶ思いを 振袖に
祇園恋しや だらりの帯よ

夏は河原の 夕涼み
白い襟あし ぼんぼりに
かくす涙の 口紅も
燃えて身を焼く 大文字
祇園恋しや だらりの帯よ

鴨の河原の 水やせて
咽(むせ)ぶ瀬音に 鐘の声
枯れた柳に 秋風が
泣くよ今宵も 夜もすがら
祇園恋しや だらりの帯よ

雪はしとしと まる窓に
つもる逢(お)うせの 差向(さしむか)い
火影(ほかげ)つめたく 小夜(さよ)ふけて
もやい枕に 川千鳥
祇園恋しや だらりの帯よ


 (Youtubeに登録の藤本二三代に感謝)