イ・ソンヒの6集所収の、「いつか言葉を失いました 笑うことさえ去ってしまい」から始まる、「なぜ私だけ(왜 나만)」(1990年、チョ・ハムン作詞・作曲)は、離別の痛みが癒されぬ歌だ。途中、叫ぶように悲嘆し苦悩の淵をさ迷い、最後に「これが私の行く道なら、どうすればよいですか」と弱さを歌う。旋律の巧みさに聴いてしまう歌でもある。
(本ブログ関連:”なぜ私だけ”)
ところで、中島みゆきの「時代」(1975年、中島みゆき作詞・作曲)も、「今はこんなに悲しくて 涙も枯れ果てて / もう二度と笑顔にはなれそうもないけど」と始まるが、いつかの出逢いを信じて歩き出すという、彼女らしい達観と太さがある。聴くというよりも歌いたくなる歌だ。
イ・ソンヒの30周年に、彼女のバックグラウンドを活かした、地に太く逞しい曲が登場することをどこかで期待している。