山歩きにとって「日本百名山」踏破は夢だろう。私にしてみれば、根っからきついことに触手がおよばない。登山であれトレッキングであれ、関心はあっても登山靴の紐を結ぶ(ブートする)ことはできなかった。
そんなぐうたら気分でも、登山気分や山の風景を味合わせてくれる番組が、深夜に再放送を重ねている。NHKの「にっぽん百名山」(関連の番組)だ。その番外ともいえる、山を異界に見立てて不思議な体験を伝える番組があった。「異界百名山~体験者が語る不思議な話~」(初2018年8月15日、再2018年9月9日、再2019年8月15日)は、山中やその周辺で体験したいくつかの奇妙なエピソード紹介と同時に、(人選に多少疑問があるが)四人の人物による体験(経験)を踏まえたスタジオトークが展開された。
NHKのサイトにある同番組「異界百名山」の紹介に、スタッフから「異界百名山との出会い」のタイトルで番組成立の背景(動機)について次のように語られている。(抜粋)
--------------------------------------------------
・・・今回の番組のディレクターが「面白い本があるんですよ!」と嬉々として見せてくれたのが「山怪〜山人が語る不思議な話」という「山と渓谷社」から出版されている本でした。著者の田中康弘さんはマタギの暮らしなどを撮影している写真家で、日本各地の山で聞いた不思議な体験を地道な取材によってまとめたルポルタージュでした。まさに自分がこれまで山で聞いて来たような不思議な話が、鬼気迫るリアリティと共に、かなりのボリュームでまとめられていたのです。この本で紹介されている不思議体験者の中には、昔からの知り合いもいて、本で紹介された話をベースに映像化したら相当面白いドキュメンタリー番組が出来るのではないかとディレクターとうなずき合ったのでした。
さっそく、著者の田中さんや出版社の方に連絡し映像化について相談したところ快諾を頂き、本には登場しない新たな取材先も加えつつ番組制作が始まりました。どうせなら、体験者の人物像や山での暮らしぶりなども深掘りしつつ、不思議体験を安易な再現映像にはせずに、山の風景のイメージ描写とインタビューのみで表現しようと考えました。撮影には情景描写に優れる一眼レフカメラを多用。結果、山の“異界感”の表現に成功したと思います。
日本の山は、太古の昔から、この世とあの世をつなぐ異界の入口だったというテーマのもと、日本人の死生観や自然との付き合い方、また、神話や物語の生まれる原点などについてスタジオトークも盛り上がりました。私たち日本人は、山にひかれ、山を仰ぎ見て、ご来光に手を合わせます。現代人が無意識のうちに求めている「異界の物語」の魅力とは何なのか?
都会でなくしてしまった「山」の中でしか得られない「何か」に気づく番組となりました。
※取材協力 田中康弘 「山怪」より
(クリエイティブネクサス プロデューサー 佐藤知樹)
--------------------------------------------------
なるほど、元ネタは、ブログでも関心を持った本「山怪」(田中康弘著、山と渓谷社)だった。「山怪」シリーズが(秘かな)ブームになっていることを先日(8/11)の祝日「山の日」に記した。今回の上記番組について率直な感想をいえば、活字と映像ではイマジネーションの入り込む余地に違いがありそう。まして「神話や物語の生まれる原点」について語り合うのなら、人選にも注意を払っていただきたかった。
(本ブログ関連:”山怪”)