朝方、NHKの「小さな旅『冬 ともに生きる ~福井県 越前海岸~』」(8:07 ~ 8:32)を視聴した。番組の主なテーマは、「越前がに」と「越前水仙」で、ともに福井県のシンボルになっている。<越前がに>では漁師の親子の継承を、<越前水仙>では老夫婦による栽培が紹介された。
特に、水仙(スイセン)について興味深かったのは、日本海の寒風を受ける急斜面(越前海岸)で栽培していたことだ。この時期、つぼみの段階で出荷するという。丈によって分別されるようだ。
スイセンの由来に、ギリシャ神話の「ナルキッソス」が、泉に浮かんだ自身の姿に陶酔したという伝えがある。つい、内陸にある「泉」を想像してしまうが、スイセンは地中海沿岸に分布し、日本でも海岸に群生する。スイセンは海辺の花である。水仙の漢字名は、中国でこの草が海辺を好んで育つことから名づけられたそうだ。
(本ブログ関連:”スイセン”)
ちなみに福井県のホームページに、「福井県のシンボル」*として次があげられている。
(*)福井県のシンボル: https://www.pref.fukui.lg.jp/doc/about/symbol.html
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・県の花 水仙
日本海のきびしい風雪に耐えぬいて寒中に咲くこの花の忍耐強さは、県民性に通ずるといわれています。
・県の鳥 つぐみ
毎年晩秋になるとシベリアから本県に渡ってきて、厳しい冬を県民と共に過ごす冬鳥の代表です。
・県の木 松
清楚で、岩や砂地にもたくましく育つ生命力は、質実剛健な県民性の象徴といわれています。
・県の魚 越前がに
荒々しい日本海でつちかわれ、福井の味として広く定着しており、冬の味覚の王者として親しまれています。
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福井県の花に選ばれたスイセンが持つ忍耐強さのイメージと、ナルキッソスの自己愛とは随分かけ離れている。上記の番組を見ながら、「日本海のきびしい風雪に耐えぬいて寒中に咲くこの花の忍耐強さは、県民性に通ずる」という福井県の解説の方に合点する。だんだんたくましい花に見えてきたじゃないか。
ところで、公園併設の「自然観察園」に群生するスイセン(昨年は1月が最盛)の咲き具合が気になる。近々、確かめに出かけてみよう。
(付記)
当地はきのう初雪だった。芭蕉の中期の句に「初雪や水仙の葉のたわむまで」があるという。雪の重みに耐えられず、水仙の葉がたわんでしまった様を詠んでいる。ここでは、雪との関係で葉のたわみを説明している。
スイセンの花は、主に横向きに、品種によって下向きに咲くものもあるようだ。ナルキッソスの、泉の水面に映った自身を下にのぞき見する姿から、花が下向きに咲くのを想起してしまうけれど・・・。