狐について、九尾狐から葛の葉までいろいろ採集しているが、寄せ集めのことゆえ何の深化もないけれど、こんな話しがある。
(本ブログ関連:”九尾狐”、”葛の葉”)
「日本書紀」の斉明(さいめい)記に、7世紀の半ば、女帝は溺愛した孫の建皇子(たけるのみこ)の夭折を悲しみ、出雲国造に命じて厳神宮(いつかしのかみのみや)を修造させる。その工事のさなか、狐が現れて於宇郡(おう)郡の人夫(役丁)の持っていた葛(かずら)の末端を食い切って逃げたという。実は、ここでは犬の怪異もセットされるという忌まわしさもあるのだが。
「狐噛断於宇郡役丁所執葛末而去」(日本書紀-朝日新聞社本)
「葛の末端」とは一体何のことか。柱を引く(或いは縛る)「かずら」(葛、蔓)の綱の端(はし)だそうだが、ここで、「末端」を「はし⇒は(葉)」と読みかえて、強引に「葛の葉」とすると、陰陽師安倍晴明の誕生につながる言葉となる。
そこまで駄洒落に過ぎなくても、狐と葛には関係が深そうだ。からみ付き縛る蔓のもつ生命力に関わるのだろうか。狐がこれを噛み切ったのは、みかどの崩御の予兆につながることだった。狐は運命を狂わせるもののようだ。でもそれがなぜ狐なのか。
「<言屋、此云伊浮耶。天子崩兆。>」(日本書紀-朝日新聞社本)