KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(6/18)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第61回として、伝統芸能パンソリの中から「欲をいましめる歌」にまつわる話を紹介した。
始めに、欲の深さを示す故事とパンソリ「水宮歌(수궁가)」の紹介から、次のように始まった。
・故事に「(後漢の光武帝が)隴を得て蜀を望む」がある。欲望に限りなく、満足を知らない。小さなことに満足するのも簡単でない。世に多様な欲望、食欲、性欲、睡眠欲、物欲、所有欲、名誉欲がある。最も諦めつかぬのが名誉欲(権勢欲)だ。ためにソンビ(学識者)は、官職を捨て隠遁生活することもあった。
・パンソリにも、欲に関する内容を伝える「水宮歌(수궁가)」がある。兎(うさぎ)の肝を探すように命じられた亀が兎をおびき出す物語で、そのとき使った手口も名誉欲だ。陸上で猛獣に追われてばかりだが、海中では魚の頭になれるとおびき出された兎は、命を奪われそうになる。日本昔話「クラゲの骨なし」とも似て、名誉欲は捨てがたいという教訓を与える。
▼ 「兎の物語り(토끼 이야기)」を聴く。英語版パンソリ、コラボ・・・せわしい今様である。
次に、パンソリ「興甫歌(흥보가)」に登場する兄弟を通じて、欲に負ける話を、次のように紹介した。
・庶民は、暮らしの欲といっても食や生活に関する位いだが、その過剰さに不安を思ったようだ。パンソリ「興甫歌」に、欲が過ぎて身を滅ぼす兄ノルボ*(놀보)の話がある。貧しい弟の興甫(フンボ、흥보)がある日、脚を怪我した燕の傷を治す。すると燕(つばめ)が恩に報い、運んだ種から成った瓢箪(ひょうたん)の実の中から金銀財宝が出てきた。金持ちになった弟の噂を聞き、兄は自分も同じ方法で金持ちになろうとするが、怪我した燕が見当たらない。欲深い兄は燕の脚をわざわざ折った後、治療してやる。燕は兄にも瓢箪の種を運ぶが、瓢箪から老人が現れて、巾着を出して金を求める。
(*)ノルボの漢字表記:ノル=”奴”の下に”乙”、ボ=甫 ・・・ (「パンソリ」申在孝、平凡社東洋文庫)
▼ 「興甫歌」から、”金を求める不思議な場面”を聴く。先祖なのか貧乏神なのか・・・風体怪しすぎる。
・巾着に金を詰めたら帰ると言うが、不思議なことに、どんなものでも入れる度に無くなってしまう。この巾着は、兄の限りない欲を象徴する。愚か者の兄は、自分の問題に気が付かず、繰り返瓢箪を割って、結局は一文無しになる。この話は兄個人だが、国の重役を担う者が欲に負けると大変なことになる。
最後に、欲に押され戦闘に負ける、「三国志演義(さんごくしえんぎ)」から赤壁歌について、次のように紹介された。
・三国志を基にした創作物「三国志演義」の話に、国の最高権力者となった曹操は、更に欲を出して呉を攻めようとする。しかし、水上の戦闘経験がない曹操と、そこに目を付けた諸葛亮(孔明)の策で、曹操が容易に敗れる。
▼ 「赤壁歌」から「赤壁火戦(적벽화전)」を聴く。手際のよい、めりはりの効いた調子だ。
・船は燃え、数万人に至る兵士が命を落とす。欲を捨てることの難しさが分かる。