辺りがしんと静まった昼過ぎ、庭先を見ると雪がまばらに降っていた。
降り始めの雪は音を吸収して、町の騒音を消すようだ。あまりの静けさに我に返り、ガラス戸を開けて雪降りを確認した。
雪は地面を濡らしていた。天気予報は、降雪がつづき、積雪の警戒・注意を呼び掛けた。
以前(2021年11月7日)のブログに、「江戸端唄集」(倉田喜弘 編。岩波文庫)のなかから、「我ものと 思へばかろし かさの雪」で始まる、冬の夜に降る雪を境に男女の恋情をうたった「わがもの」について記した。該当の部分を以下再掲する。
ところで、この歌について、上掲の文庫に注釈がある。(*印は補注)
〇 わがものと・・・かさの雪 宝井其角が元禄期に詠んだ句*(五元集)
(*)其角の「我雪と おもへばかろし 笠の上」が改変されて上記俗謡になる。
〇 紀貫之の和歌「思ひかね妹(いも)がり行けば冬の夜の河風寒み千鳥鳴くなり」(拾遺集** 冬 224)
(**)「勅撰集における『冬の千鳥』の早い例です。千鳥が冬の景物と認定されたのは、下って『堀河百首』で冬部に『千鳥』題が設けられた時でしょう。」
- 「冬の『千鳥』」(吉海直人 同志社女子大学教授、2017/11/16)
https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/2017-11-16-09-40
(本ブログ関連:”千鳥”)
■ 再掲(以下)
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一九 わがもの
我ものと 思へばかろし かさの雪 恋の重荷をかたにかけ いもがり*ゆけば 冬の夜(よ)の 川風寒く千鳥なく 待(まつ)身につらき 置(おき)ごたつ 実にやるせが ないわいな
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(*)いもがり: 女性の許(もと)
SPレコード「勝太郎市丸十八番集」(ビクターレコード)から:
「わがもの」 歌:市丸、三味線:才香、番号:KI-1、mat:9427、発売:1938年、区分:端唄
(参照)78Music: http://78music.jp/victor.html
(Youtubeに登録のkotyavideoに感謝)