人を化かす動物といえば狐と狸。狡猾な化かしをする狐に比べて、どこか間抜けでお人好しの感がする狸。その狸を、「狢(ムジナ)」ともいうけれど、実体はアナグマのようだ。
写真などでみるアナグマは、狸のような丸みがなく愛嬌が不足している。まさに、イタチ科とイヌ科の違い。さらに狢とされる、ハクビシンにいたってはネコ科に属していて、もっと遠い。
この狢を題材にした、L.ハーンの怪談に登場するのは、狸でもアナグマでも、ましてハクビシンでもない。<のっぺらぼう> なのだ。夜道で、人の好い商人を巻き込んで化かして驚かす。その仕打ちは狐の化かし風。しかも、追い討ちをかけるように、屋台の蕎麦売りも組んで驚かす。
一体どうして、狢が <のっぺらぼう> なのだろう。顔を隠しながら相手を見る、正体不明の顔にしたのだろう。それとも、商人が迂闊だったのか。(顔を隠した狢に翻弄される商人、それとも目先しか見えない商人)