KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(6/5)に、文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第9回として、仏教儀式のひとつである「霊山斎(ヨンサンジェ、영산재)」について紹介された。今回は、待望の「霊山斎」だ!
(本ブログ関連:"霊山斎")
まず行事としての霊山斎について次の紹介から始まった。
・「6・25」と呼ぶ「朝鮮戦争」(1950年6月25日~1953年7月27日休戦)の厳しい困難を乗り越えて今があるのは、命をささげた人々のためとして、6月6日を記念日「顕忠日」としている。政府が記念式典を開き、国立墓地である顕忠院を参拝する。
・新村にある太古宗(태고종)の本山奉元寺(봉원사)は、伝統的仏教儀式のひとつである「霊山斎」を6月6日に行なう。霊山斎は、霊魂の冥福や極楽往生を祈願する儀式で、古く歴史を持ち、独特な音楽と踊りを持つ。2009年、ユネスコ無形文化遺産に登録された。
▼霊山斎の音楽を現代風にアレンジした一曲「香を焚く」を聴く。・・・今様で、軽快で。
霊山斎での梵唄の来歴について次の解説があった。
・霊山斎の「梵唄(ボムペ、범패)」は、釈迦と歴代高僧の言葉を歌詞とするため、歌というよりは念仏に聞こえる。1500年余り前、インド仏教音楽がシルクロードを経由して中国、韓国に伝えられた。梵唄は、インド伝来の歌の意がある。
・当初、梵唄は特別な人々の間で伝承されたが、統一新羅時代、真鑑(진감)禅師(774年~850年)が唐に留学して新しい形の梵唄を学んだ結果、広く歌われようになった。
・梵唄は、専門的に学んだ僧侶だけが歌えるもので、歌詞を長く伸ばすのが特徴。例えば、霊魂を明るい道へ引導し、「引路王菩薩(인로왕보살)」を呼び寄せるために「南無大聖 引路王菩薩(나무대성인로왕보살)」を歌うとき、この9文字の歌詞に一時間ほどかける。南無(나무)の二文字に15分くらいで、発音はもはや意味を成さず、「あぁ、えぇ」といい母音を長く伸ばす。これにメロディーと長短(リズム)を付けて長吟する。高度な集中力が必要なため、梵唄を歌う僧侶は、歌うこと自体ひとつの修練と考える。
▼「南無大聖 引路王菩薩」の中から一部を聴く。聞くというよりは、ことばの響きやうねりを自己に同一化することなのだろうか。
霊山斎での舞について次の紹介があった。
・仏教儀式の舞踊は「法鼓(법고)」と呼ばれ、4つの代表的踊りがある。
- 小さな太鼓をたたきながら踊る「法鼓舞」
- インド伝来の楽器の鈸羅(バラ)を持って踊る「鈸羅舞」
- 蝶のようにひらひら揺れる美しい服を着て踊る「胡蝶舞」
- 悟りを開くための道を示す「打柱舞」
・霊山斎は本来、亡くなった人の冥福を祈るための儀式だが、それ以外にも、この世に彷徨う霊魂を始め、儀式の場に集まったすべての人々、そして動物や虫たちに至るまで、釈迦の言葉を聞いて悟りを開かせるという大きな意味を持つ。幼虫が殻を脱ぎ捨て蝶となるように、苦悩から抜け出し、解脱の境地に至るようにという、釈迦の慈悲そのものという。
▼霊山斎で踊られる鈸羅舞の際に演奏される「千手鈸羅(천수바라)」を聴く。
(参考)奉元寺の霊山斎での千手鈸羅
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