小学校の校庭の空をいつも、双胴の輸送機が飛んでいた。見上げると、ブンブンと響かせながら白い空に停止しているように見えた。どうやら遠い川の向こうにある、米軍基地から飛んでいたようだ。
中学生になると、ひとなみに飛行機が好きになり、マニア向けの雑誌があると知って、近所の小さな本屋に探しに行った。
「ひこうファンってありますか?」と歳とった主人にたずねた。
「えっ、ひこう?」、いぶかしそうに、主人はまさか「非行」でもあるまいといった顔をしながら聞き返した。
店頭に置かれた雑誌「航空ファン」を見つけて、しばらく愛読者になった。
飛行機雲がぐんぐんと青い空を突き進んでいくのを見るのも好きだった。雲の筋は恐怖の存在ではなくて、上空を突き抜けて宇宙へ向かって行くような未来を感じた。夕陽をうけて、雲の先がきらりと反射する光景を見るとなおさら心が浮き立ったものだ。
飛行機ファンの記憶から、「ワルキューレの騎行」の旋律を背に飛翔する軍用機の姿が消えない。中学生のころプラモデル作りにはまって、しっかり彩色した後、それを手に持って口ずさんだのものだ。手首をひねらせては、あらゆる角度で飛行する様子を想像した。
子を持つ身になったとき、決して軍用機の話はしなかったけれど、飛行機好きになるように、イベントでパイパーチェロキーに一緒に乗ったりした。しかし、それ以来、息子は飛行機が嫌いになってしまったようだ。
ああ、今も好みの飛行機が浮かんでくる。でも、軍用機なので、3機の名は記さないでおこう。
(Youtubeに登録のyoisachiに感謝)