KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(9/9)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズとして、「船(배)」にかかわる3曲を紹介した。
始めに、李朝末の朴趾源(박지원、1737年3月5日~1805年2月5日)の文集「熱河日記(열하일기)」に記された、漁船の出港の曲「ペタラギ(배따라기)」について、次のように紹介された。
・海辺の人々に海はどんな存在か。最も有難く、恐ろしい存在でもある。漁船の出港に、無事を祈るのみだ。李朝末巨匠、朴趾源の文集「熱河日記」に、舟が去りいく意の「ペタラギ」の曲について記録がある・・・ただし、今、彼の描いた「ペタラギ」は継承されていない。
・悲しい曲調の歌だが、出舟する過程を記している。まず、舟を花などで飾り、妓生一組が並ぶ。そして、軍隊の礼節からはじめ、ラッパを吹き出す。すると、村中が音楽を奏し、妓生は絹織物に刺繍をした衣服を着て船の両側に立つ。みなが漁夫の歌を歌いだし、演奏がはじまる。舟が錨を上げて旅立つと、妓生は歌を歌って祝う。
▼ 舟の出るを歌う平安道民謡「ペタラギ」を聴く。厳かな祝い歌か。(cf. フォークグループのペタラギの歌もよい)
・「ペタラギ」を素材にした、1920年代の金東仁(김동인、1900年10月2日~1951年1月5日)の小説「ペタラギ」がある。兄は、美しい妻と弟の仲を疑い、結局、誤解の末、妻は自ら命を絶ち、兄弟は縁を切る。自分の過ちを後悔した兄は漁夫になり、数十年をかけて弟を探し歩く。でも、弟が歌う「ペタラギ」は聞こえてくるものの、弟を探すことはできなかった。
次に、2010年の砲撃事件の島、延坪島に伝わる民謡「難逢歌(난봉가)」について次のように紹介された。
・北方限界線の南側にある延坪島は、海上に列車が走るように平らな形から、延坪島と呼ばれる。美しい景色があり、北の海を見渡すことができる、絵のような砂原が広がる。島に伝わる歌「難逢歌」で疲労を解消する人々の島だ。
▼ 延坪島の「難逢歌」の歌を聴く。難逢(난봉)は本来「放蕩の人」を指すという・・・海の大らかさか、今様に響く。
最後に、ソウルを横切る漢江を頻繁に往来した舟、「紫船ふね(시선배)」について次のように紹介された。
・朝鮮戦争(韓国戦争)の頃まで、ソウルを横切る漢江は重要な交通路だった。景色も見事で、昔、金持ちの両斑は妓生たち乗せて舟遊びを楽しんだ。地方から、税として穀物搬送船もあった。江原道の木材を筏で運ぶ人々もいた。特に、漢江を頻繁に往来した舟を「紫船ふね」と呼んだ。ソウルより車で約2時間にある江華島から肉や木材を、当時の都漢陽(現ソウル)に運んだ。最大限、内陸に行けるよう、船底を広く平らにした。麻浦、永登浦、露梁津などに有名な渡し場があったが、今は痕跡はなく、歌だけが伝わる。
▼ 紫船ふねの歌から「櫓を漕ぐ音(노 젓는 소리)」の歌を聴く。歌に調和して櫓を漕ぐ音も聞こえてきそう。