先日、東京大学総合研究博物館主催の特別展示「生きる形」に出かけ、会場にずらりと並んださまざまな生き物の骨格標本を見て以来、気になって骨に関する書籍を探した。素人にも理解しやすそうな・・・、「骨単(ホネタン)」(監修:河合良訓、文・イラスト:原島広至、出版:NTS)を、国分寺の紀伊国屋書店で購入した。
皮膚の下で、筋に支えられ筋肉で動く人間の<骨>について、骨の図と名称に語源を加えた骨の事典だ。図版は、実際の骨格標本を手にとり、Illustratorを使って描いたためシャープで見やすい。最初は医学生に関心を持たれたが、好評でそれ以外のひとびとにも読者が広がったようだ。
著者が接した骨格標本のラベルから、若くして亡くなった女性のものであると知ったときの心情が書かれた序文は胸を打つ。だから、この本に描かれた骨のひとつひとつから、事典としての情報だけでなく、命の意味も知らされる。
さて、骨の名は、英語と日本語(全て日本語<漢字>で表すことのできる素晴らしさ)で表記されている。英語の名前をもとに、著者はそこからが凄い・・・ギリシャ語、ラテン語などの語源を駆使して、医学に関係ない読者にも関心を持てるよう様々な解説を加える。
例えば、頭蓋骨と首の骨はどう繋がっているのだろうか。首の頚椎の上に環椎という骨があって、それが頭骨を支えているという。ギリシャの巨神Atlasが天空を支えていることから環椎にあたる骨が"Atlas"と名付けられた。更にAtlasを語源にして、メルカトル図法の地図をアトラスと呼び、アトランチス大陸に話が広がり、ジョージア州の都市アトランタの名前の由来へと話がつづく・・・。
ところで、上記の展示会を教えてくれたのも、この書籍の出版にも遠縁が関わっている。