人の名前を覚えるのは得意でない。若い頃はそうでもなかったのに。最近、テレビに出演するタレントが一体誰なのか、名前すら浮かんでこなくて慌てる。
テレビは、情報を次から次へと視聴者に送り込み、選別整理する余裕を与えない。視聴者は、テレビの垂れ流しをそのまま受け、出演者を顔かたちだけしか認識せず、それ以上関心を深めることもなく、聞き流し、見流す。
テレビタレントの名前を思い出したいときに便利なのは、リモコンに付いている「番組内容」ボタンだ。テレビのデジタル化以来、番組内容を別画面(文字情報)にして見られるようになった。そこには、番組内容だけでなく、出演者の情報まで載っている。人物について更に知りたければ、PCで調べればよい。
なぜ、歳とともに他人のことを忘れるのか、単に老化だけとはいえないだろう。生物の発生(過程)で、最適な形態を形成するとき、例えば人は胎内で指の間にあった水かきの細胞をなくす(アポトーシス)ことで、5本の指を独立させる。何かを失うことで何かを得るという意味がある。だから、他人の名を忘れるのも、人生の最適化と思えばいいのではないだろうか。