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2013年6月7日金曜日

(資料) 韓国テレビドラマの九尾狐

イ・ソンヒが、愛弟子イ・スンギの主演したSBSのテレビドラマ「僕のガールフレンドは九尾狐」で、テーマ曲「狐の嫁入り(여우비、天気雨)」を歌って以来、狐に関する故事(九尾狐、稲荷など)に関心を持ってきた。古今東西を問わず人間との関わりの多い狐は、米作の豊穣につながる神仏(宗教)性と、本来の肉食という2つの側面を持つ興味深い動物である。
東亜日報の記事「ドラマの中の『九尾狐』、40年間のキャラクター変遷の歴史」(6/7)は、テレビドラマの中で異種としての怪物、弱者、友人など変遷する九尾狐について、次のように紹介している。(최고야記者:best@donga.com )

(本ブログ関連:”九尾狐”)
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●怪物で少数者で…今は友人

《狐は古くからずる賢くて狡猾な動物に通じた。口碑文学に伝わる130編余の狐の説話で、狐は忍術)を使い、人間を脅かす存在として描かれる。多くの狐は、人間界に降りて人のふりをして発覚し、殺されたり、追い出される悲運をむかえる。数多くのキツネの説話中、九尾狐の話が特に注目される理由は、尾が九つ付いたキツネが美しい女性に変身して人間の肝(きも)を貪るという劇的な設定のためだ。1970年代から九尾狐の説話をモチーフにしたドラマが作られ続けている理由だ。40年以上の歳月を経て、変化している禁断のキャラクターを概観する。》

●2000年代以前 敵対的な九尾狐

1970年代から1990年代までは"人食い"の九尾狐が登場する時期だった。この時期の九尾狐は、KBSのテレビドラマ「伝説の故郷」などの恐怖物にのみ存在した。九尾狐が人間になるためには、100日間(長くは10年間)、人間と一緒に暮らしたり、人間の肝100個を食べなければならないというふうに設定されていた。

しかし、九尾狐がなぜ、人間になりたがるのかははっきりしていなかった。九尾狐が人間に生まれ変わることに成功し、幸せに暮らしたというストーリーなどない。大半は人間に殺されたり、森の中に永遠に隠れて暮らすために去るという悲劇的な結末で終わった。

人間との敵対性も激しい。九尾狐をよこしまな物とみなし、取り立てた理由も無く殺そうとする狩人が登場したり、人間に子供を殺された九尾狐が、怖い復讐の化身となり、人間の世界を脅かす。たとえ、人間を信じる"やさしい九尾狐"といえども、人間の裏切りによって信頼はまもなく憤りに変わる。短くは100日から、長くは10年間、人間になるための九尾狐の努力を、人間が一夜にして踏みにじるからだ。

●2000年代は、韓国社会のマイノリティー

21世紀初頭、ドラマの中の九尾狐は強力な怪物から、異種の少数者へと変わる過渡期を迎える。この時期の九尾狐は、人間社会に共存するが、一緒に馴染められず、時には弾圧を受ける弱者として現れる。かつて、九尾狐の恐怖物の根幹を成していた"人間対九尾狐"という善悪構図から脱し、共存するものの、受け入れたくない"嫌われる存在"と認識される時期だ。同様に、この時期もハッピーエンドはない。

このようなパターンは、1999年夏以降制作が中止となったが、2008年に復活した「伝説の故郷」で、はっきりと現れている。2008~2009年に制作された「伝説の故郷-九尾狐の巻」には、人間によって一方的に殺される九尾狐が出てくる。人間らは、富貴栄華をもたらす狐の玉を手にしたり、家門の秘密を守るため、九尾狐を殺戮する。

”フュージョンの九尾狐”も登場した。2004年KBSのドラマ「九尾狐外伝」は、現代社会を生きる九尾狐族と、彼らを皆殺ししようとする「SCIS」という団体との対立を描いた。九尾狐族と人間との男女の愛を中心に扱ったが、人間の世界に暮らしている少数者として、九尾狐に焦点を当てた。

2000年代は、韓国社会で、外国人労働者や多文化家庭、トランスジェンダー、同性愛者など、社会的少数者への関心が急増した時期。九尾狐の変化も、時代的変化と無縁ではないというのが、専門家の主張だ。

●2010年に入っては、友人または能力者

フュージョンの九尾狐の延長線上で、2010年以降、かわいくて突拍子だったり、正義に燃える”人間よりもさらに人間らしい"尾狐のキャラクターが登場する。

2010年のSBSのドラマ「僕の彼女は九尾狐」の女優のシン・ミナは、突拍子で愛嬌たっぷりの彼女・九尾狐役に扮した。さらに、肉を買うためにはじめたバイトで、経済事情が悪化した彼氏を食べさせる生活力の強いかわいいキャラクターとして描かれている。九尾狐が人間になり、幸せな結末を迎えた唯一のドラマだ。

現在放送中のMBCのドラマ「九家の書(구가의 서)」でも、獣人の九尾狐の青年に扮したイ・スンギは、人間よりも人間らしい義理派だ。家族同然の付き合いをしてきた人たちを忘れることができず、彼らを守るため、命も惜しまない。膨大な怪力を、正義のために使ったりもする。

恐怖物からフュージョン劇へと変わる過程で表れる最大の特徴は、九尾狐が人間になりたがる理由がはっきりしていることだ。かつては、なりふり構わず人間になる道を選んだなら、最近の九尾狐は、愛する人間と一緒にいたいという強い欲望を抱いている。九尾狐はもはや、怪物やマイノリティーではなく、人間と共存する友人として認識されている。
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(付記)
ところで、”フュージョン”ドラマとは、いろいろな要素を併せ持った(時代性や価値観が自由な視点の)ドラマといったところだろう。