中央日報(日本語版)の記事「<韓国大統領選>専門家が見る世代投票の原因」(12/22日)は、今回の投票について、世代別の傾向分析を次のように報じている。
朝鮮日報の記事同様、ここでも40歳代の傾向について、明確に語られていないのが気になる。
・ 専門家は、今回の韓国大統領選挙では「世代投票」現象が目立ったと話している。世代別に感じる期待感または剥奪感が投票に決定的な影響を与えたということだ。
・ イム・ソンハク・ソウル市立大教授(国際関係学)は「20・30歳代は基本的に大学授業料、就職、マイホーム問題などで社会への不満が強い。これが多数の若者が文在寅(ジェイン)民主統合党候補を選択しようとした理由」とし「北方限界線(NLL)論争と国家情報院女子職員事件、虚偽の流布などに失望して投票しなかったり、朴槿恵候補側から離脱した若者層がかなりあった」と分析した。また「50歳代は産業化と民主化ともに中間的な寄与をしたが、いかなる評価も受けられず疎外感を感じている“狭間の世代”。この世代が野党から旧態依然の世代として無視されるような印象を受け、50歳代の中道層も朴候補にかなり動いた」と述べた。
・ ノ・ドンイル慶煕大教授(法学)は「20・30歳代は改革的な性向が強く、現政権に対する不満も多い」とし「50歳代は文在寅候補側が『若者が投票場に出てきてこそ当選する』という形で20・30歳代中心のフレームを形成し、疎外感を感じたはず」と指摘した。
・ パク・ミョンホ東国大教授(政治学)は「現在の50歳代は、かつて40歳代の時、盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に投票した世代。しかしその後の10年間、小中高生の子どもの学費、不動産費用、物価など多くの問題を経験し、盧武鉉政権に対するトラウマがどの世代よりも強い」と分析した。また「文候補は『投票率が上がり、候補一本化をすれば勝つ』という形のイベントだけを盲信し、中道層と20・30歳代にも失望感を与えたとみられる」と述べた。
・ シン・ユル明知大教授(政治外交学)は「50歳代の非常に高い投票率(89.9%)は単に安保・経済政策などの問題で達成された数値ではない」とし「職場を引退したり、または引退圧力を受けているところに、家庭でも待遇を受けられないなど疎外感を感じている50歳代以上の世代が、民主党のSNS選挙運動、若者中心の選挙運動にまたも疎外感を感じ、刺激されたとみられる」と述べた。続いて「若い層は反対に、こうした心情的な傷が50歳代以上に比べると少なく、これによって投票率が相対的に低かった」と話した。
・ “李正姫(イ・ジョンヒ)変数”と安保危機感が50歳代以上を結集させる原因になったという分析も出てきた。ユン・ジョンビン明知大教授(政治外交学)は「中壮年層は安保争点に対する懸念と理念的抵抗感がかなり強い世代」とし「統合進歩党への従北批判、李正姫候補がテレビ討論で見せた攻撃的な態度、NLL論争などが安保フレームと直結し、50歳代以上を団結させた」と分析した。
(本ブログ関連:"(資料)397世代"、"(資料)486世代"、"(資料)40代の変化"、"(資料)40代の変化-2"、"(資料)ソウル市長選挙に見る世代別背景")
2012年12月23日日曜日
(資料)世代別投票分析:朝鮮日報
朝鮮日報(日本語版)は、韓国大統領選挙の世代別投票動向について、次(①、②)のように、地上波3社の出口調査をもとに投票動向の分析を報じている。
50-60歳代と20-30歳代に世代を大きく分けているが、その中間に属する40歳代の分析がみられないのはなぜだろう・・・分析する大学教授、報じる記者たちは同じ世代なのだろうか。
① 「大統領選:選挙結果を左右した50、60代の不安感」(12/21)
崔賢黙(チェ・ヒョンムク)記者、李竜洙(イ・ヨンス)記者
#1
・今回の韓国大統領選で朴槿恵(パク・クンヘ)氏が当選した最大要因として、専門家は50、60代が進歩・左派陣営に感じた不安感を挙げた。自分たちの世代がつくり上げた時代が全否定されるような状況に怒りを感じた人が多かったようだ。地上波3社の出口調査*によれば、50代の投票率は89.9%、60代以上は78.8%で、20-40代に比べはるかに高かった。50代の投票者の62.5%が朴氏に投票し、今回の選挙の勝敗を左右した。50代以上の有権者は今回の選挙でちょうど40%を占めていた。
(*)地上波3社の出口調査グラフ。
■50、60代の高い投票率
・専門家は今回の選挙で「50、60代の不安」が勝敗を分けたと分析した。地上波3社の出口調査によると、50代の時間帯別投票率は午前6時から午後4時までの10時間、20-40代を一貫して上回った。
・慶熙大の林成浩(イム・ソンホ)教授は「50、60代も現実に不満はあるが、それよりも不安感が大きい世代だ。経済と北朝鮮問題などでどちらかと言えば不安を感じない方に投票したと言える」と述べた。
・50、60代は文在寅(ムン・ジェイン)候補陣営の親盧武鉉(ノ・ムヒョン)勢力に不安を感じたとの意見もある。檀国大のカ・サンジュン教授は「親盧勢力が政権を握っていた2003年のヨルリン・ウリ党の結党過程で国政が混乱したことを記憶している50、60代は『準備できた大統領』を掲げる朴氏に投票した」と指摘した。
・盧元大統領が西海(黄海)で北朝鮮との海上での軍事境界線である北方限界線(NLL)を放棄するとの発言を行ったとの疑惑が浮上し、50、60代の安全保障に対する不安感を刺激したとの指摘もあった。韓神大の尹平重(ユン・ピョンジュン)教授は「北朝鮮問題、特にNLL放棄発言論争が事実か否かに関係なく重要な議題になった。50、60代は北朝鮮による挑発の歴史に鮮明な記憶を持つ世代であり、安全保障に対する感じ方が20、30代とは異なる」と分析した。
#2
■李正姫氏への怒り
・統合進歩党から出馬した李正姫(イ・ジョンヒ)氏が候補者による第1回テレビ討論で「大活躍」したことが、保守層の50、60代を結集させたとの分析も多い。明知大の尹鍾彬(ユン・ジョンビン)教授は「1回目のテレビ討論で李氏が朴氏を責め立てる様子を見た高齢者の中には、『あれを見てから眠れなかった』と話す人が多かった」と語った。
・「朴正熙(パク・チョンヒ)対盧武鉉」という構図も50、60代の有権者を刺激した。ソウル大の韓圭燮(ハン・ギュソプ)教授は「50、60代は文在寅氏や李正姫氏が朴正熙元大統領を攻撃したことで、当時の朴元大統領には反対でも、産業化を成し遂げた自分たちの世代を全て旧態勢力と決め付けられたことに反感が大きかった」と分析した。慶熙大の権泳俊(クォン・ヨンジュン)教授は「50、60代は朴正熙元大統領に対する郷愁が残る最後の世代だ」と指摘した。
■国家情報院攻撃、民主党に逆風
・選挙戦終盤で民主党は国家情報院の女性職員による違法選挙運動疑惑を指摘した。これが結果的に50、60代の不安感を増幅させた。前出の尹平重教授は「民主党が確実な根拠もなく女性職員を監禁し、国家情報院や警察など国家機関を攻撃したことは、(民主党に対する)強い逆風を呼んだ」との見方を示した。
・高齢化が急速に進む中、今後の選挙では50、60代の有権者の心をつかめない政党は負けるとの指摘が多く聞かれる。慶熙大の尹聖理(ユン・ソンイ)教授は「先月の米大統領選では、共和党は増加する有色人種を掌握できない限り勝てないとの分析が支配的になった。韓国の進歩政党も若い層にだけ頼っていては政権獲得が難しいのではないか」と話した。
・高麗大の李来栄(イ・ネヨン)教授は「民主党も年間医療費上限制など50、60代を狙った公約に神経を使ったが、50、60代は長い人生を歩んできただけに簡単には信じない」と指摘した
② 「大統領選:20-30代が文在寅氏を支持したワケ」(12/21)
チョン・ヒョンソク記者
「不安、不満、不信の『3不』が大きな背景」
「理念的な傾向は強くない」
#1
・大統領選当日の今月19日にテレビ局3社が行った出口調査の結果、20代の有権者の65.8%、30代の66.5%が野党・民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補に投票したことが分かった。50代の62.5%、60歳以上の有権者の72.3%が、当選した与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補を支持したのとは正反対の結果だ。20-30代の人たちが文候補を支持した理由について、専門家たちは「現実に対し大きな不満を持ち、変化を望んだためだ」との見方を示す一方、政治理念的な進歩派、左派と見るのは困難だ、と主張した。
■「3不世代」の爆発
・20-30代は一般的に「3不世代」と呼ばれる。「3不」とは「不安」「不満」「不信」を指す。現在の20-30代は、青少年期にアジア通貨危機を直接・間接的に経験した。激しい受験戦争を経験した後も、スペック(学校の単位や語学の成績などを指す)をめぐる競争に苦しみ、大学卒業後には就職難に直面した。就職できても、多くは非正規雇用者(パートタイマー、契約社員など)だったり、給料が安かったりし「(月給)88万ウォン(約6万9000円)世代」と呼ばれている。そして結婚しても、出産や育児、住宅の確保などで苦労を強いられる。このような社会的・経済的な背景の下、社会に対する大きな不満や不信感を抱き、将来について不安に感じているというわけだ。今回の大統領選を前に、20-30代の間で盛り上がった「安哲秀(アン・チョルス)現象」も、既成政治家が自分たちの直面する問題を解決できないということに対する不満の表れだとの見方が多い。檀国大のカ・サンジュン教授は「386世代(1990年代に30歳代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)は政治的に大きく揺れ動いたが、大学を卒業しさえすれば良い会社に就職できるほど、経済的に安定していた。しかし現在の20-30代は、政治不信や経済的なはく奪感が大きい」と指摘した。
#2
■「理念的な傾向が強い世代ではない」
・慶煕大の尹聖理(ユン・ソンイ)教授は「20-30代が文候補を支援したという理由で、彼らを「進歩派」に分類するのは、学生運動世代の錯視現象だ。今回の大統領選で、20-30代は進歩、保守といった価値観よりも、現実的な理由から投票行動に及んだと見るのが妥当だ」との見方を示した。
・高麗大の李来栄(イ・ネヨン)教授は「今回の大統領選では、大学の学費の半額化や兵役期間の短縮、非正規雇用者の問題など、20-30代の有権者に直接・間接的な影響を与える公約が多く打ち出された。20-30代にとって、文候補に投票したのは合理的な選択だったといえる」と指摘した。
・5年前の大統領選では、20-30代の有権者は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の経済政策や雇用政策の失敗に対する批判から、ハンナラ党(現・セヌリ党)の李明博(イ・ミョンバク)候補を選んだ。大統領選当日に韓国ギャラップが行った出口調査の結果、李候補に対する20代の支持率は40.3%、30代では39.7%に達し、大統合民主新党(現・民主統合党)の鄭東泳(チョン・ドンヨン)候補(20代18.8%、30代27.7%)を上回った。
・カ・サンジュン教授は「当時、李明博候補は747公約(年7%の経済成長により、一人当たりの国民所得を10年以内に4万ドル〈約340万円〉に引き上げ、世界第7位の経済大国を目指す)などを打ち出し、若い世代に「経済的に今よりも良くなる」という希望を抱かせたが、結果は思わしくなかった」と指摘した。一方、ソウル大の韓圭燮(ハン・ギュソプ)教授は「20-30代の有権者が朴槿恵候補を支持しなかった理由は、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘ということよりも、テレビ討論などで上手な答弁ができず、危機を解決する能力が不十分だと思われたためだ」との見方を示した。
■「李正姫候補は20-30代にとっても逆効果」
・尹聖理教授は「統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)候補が出馬したため、文候補の票がいくらか割れた側面もある。文候補が当選すれば、北朝鮮と無条件に全面的な対話を再開し、一方的な対北支援を行うという認識が、20-30代の間でも定着していた。これが李正姫候補のイメージと重なったため、いくらか票が割れる要因となった」との見方を示した。
・民主党の関係者は「現在の20代はもとより、今後有権者となる世代も、1980-90年代のように、むやみに野党を支持する世代ではないということを認識し、選挙戦略を練る必要がある」と指摘した。
(本ブログ関連:"(資料)397世代"、"(資料)486世代"、"(資料)40代の変化"、"(資料)40代の変化-2"、"(資料)ソウル市長選挙に見る世代別背景")
50-60歳代と20-30歳代に世代を大きく分けているが、その中間に属する40歳代の分析がみられないのはなぜだろう・・・分析する大学教授、報じる記者たちは同じ世代なのだろうか。
① 「大統領選:選挙結果を左右した50、60代の不安感」(12/21)
崔賢黙(チェ・ヒョンムク)記者、李竜洙(イ・ヨンス)記者
#1
・今回の韓国大統領選で朴槿恵(パク・クンヘ)氏が当選した最大要因として、専門家は50、60代が進歩・左派陣営に感じた不安感を挙げた。自分たちの世代がつくり上げた時代が全否定されるような状況に怒りを感じた人が多かったようだ。地上波3社の出口調査*によれば、50代の投票率は89.9%、60代以上は78.8%で、20-40代に比べはるかに高かった。50代の投票者の62.5%が朴氏に投票し、今回の選挙の勝敗を左右した。50代以上の有権者は今回の選挙でちょうど40%を占めていた。
(*)地上波3社の出口調査グラフ。
■50、60代の高い投票率
・専門家は今回の選挙で「50、60代の不安」が勝敗を分けたと分析した。地上波3社の出口調査によると、50代の時間帯別投票率は午前6時から午後4時までの10時間、20-40代を一貫して上回った。
・慶熙大の林成浩(イム・ソンホ)教授は「50、60代も現実に不満はあるが、それよりも不安感が大きい世代だ。経済と北朝鮮問題などでどちらかと言えば不安を感じない方に投票したと言える」と述べた。
・50、60代は文在寅(ムン・ジェイン)候補陣営の親盧武鉉(ノ・ムヒョン)勢力に不安を感じたとの意見もある。檀国大のカ・サンジュン教授は「親盧勢力が政権を握っていた2003年のヨルリン・ウリ党の結党過程で国政が混乱したことを記憶している50、60代は『準備できた大統領』を掲げる朴氏に投票した」と指摘した。
・盧元大統領が西海(黄海)で北朝鮮との海上での軍事境界線である北方限界線(NLL)を放棄するとの発言を行ったとの疑惑が浮上し、50、60代の安全保障に対する不安感を刺激したとの指摘もあった。韓神大の尹平重(ユン・ピョンジュン)教授は「北朝鮮問題、特にNLL放棄発言論争が事実か否かに関係なく重要な議題になった。50、60代は北朝鮮による挑発の歴史に鮮明な記憶を持つ世代であり、安全保障に対する感じ方が20、30代とは異なる」と分析した。
#2
■李正姫氏への怒り
・統合進歩党から出馬した李正姫(イ・ジョンヒ)氏が候補者による第1回テレビ討論で「大活躍」したことが、保守層の50、60代を結集させたとの分析も多い。明知大の尹鍾彬(ユン・ジョンビン)教授は「1回目のテレビ討論で李氏が朴氏を責め立てる様子を見た高齢者の中には、『あれを見てから眠れなかった』と話す人が多かった」と語った。
・「朴正熙(パク・チョンヒ)対盧武鉉」という構図も50、60代の有権者を刺激した。ソウル大の韓圭燮(ハン・ギュソプ)教授は「50、60代は文在寅氏や李正姫氏が朴正熙元大統領を攻撃したことで、当時の朴元大統領には反対でも、産業化を成し遂げた自分たちの世代を全て旧態勢力と決め付けられたことに反感が大きかった」と分析した。慶熙大の権泳俊(クォン・ヨンジュン)教授は「50、60代は朴正熙元大統領に対する郷愁が残る最後の世代だ」と指摘した。
■国家情報院攻撃、民主党に逆風
・選挙戦終盤で民主党は国家情報院の女性職員による違法選挙運動疑惑を指摘した。これが結果的に50、60代の不安感を増幅させた。前出の尹平重教授は「民主党が確実な根拠もなく女性職員を監禁し、国家情報院や警察など国家機関を攻撃したことは、(民主党に対する)強い逆風を呼んだ」との見方を示した。
・高齢化が急速に進む中、今後の選挙では50、60代の有権者の心をつかめない政党は負けるとの指摘が多く聞かれる。慶熙大の尹聖理(ユン・ソンイ)教授は「先月の米大統領選では、共和党は増加する有色人種を掌握できない限り勝てないとの分析が支配的になった。韓国の進歩政党も若い層にだけ頼っていては政権獲得が難しいのではないか」と話した。
・高麗大の李来栄(イ・ネヨン)教授は「民主党も年間医療費上限制など50、60代を狙った公約に神経を使ったが、50、60代は長い人生を歩んできただけに簡単には信じない」と指摘した
② 「大統領選:20-30代が文在寅氏を支持したワケ」(12/21)
チョン・ヒョンソク記者
「不安、不満、不信の『3不』が大きな背景」
「理念的な傾向は強くない」
#1
・大統領選当日の今月19日にテレビ局3社が行った出口調査の結果、20代の有権者の65.8%、30代の66.5%が野党・民主統合党(民主党)の文在寅(ムン・ジェイン)候補に投票したことが分かった。50代の62.5%、60歳以上の有権者の72.3%が、当選した与党セヌリ党の朴槿恵(パク・クンヘ)候補を支持したのとは正反対の結果だ。20-30代の人たちが文候補を支持した理由について、専門家たちは「現実に対し大きな不満を持ち、変化を望んだためだ」との見方を示す一方、政治理念的な進歩派、左派と見るのは困難だ、と主張した。
■「3不世代」の爆発
・20-30代は一般的に「3不世代」と呼ばれる。「3不」とは「不安」「不満」「不信」を指す。現在の20-30代は、青少年期にアジア通貨危機を直接・間接的に経験した。激しい受験戦争を経験した後も、スペック(学校の単位や語学の成績などを指す)をめぐる競争に苦しみ、大学卒業後には就職難に直面した。就職できても、多くは非正規雇用者(パートタイマー、契約社員など)だったり、給料が安かったりし「(月給)88万ウォン(約6万9000円)世代」と呼ばれている。そして結婚しても、出産や育児、住宅の確保などで苦労を強いられる。このような社会的・経済的な背景の下、社会に対する大きな不満や不信感を抱き、将来について不安に感じているというわけだ。今回の大統領選を前に、20-30代の間で盛り上がった「安哲秀(アン・チョルス)現象」も、既成政治家が自分たちの直面する問題を解決できないということに対する不満の表れだとの見方が多い。檀国大のカ・サンジュン教授は「386世代(1990年代に30歳代で80年代に大学に通った60年代生まれの世代)は政治的に大きく揺れ動いたが、大学を卒業しさえすれば良い会社に就職できるほど、経済的に安定していた。しかし現在の20-30代は、政治不信や経済的なはく奪感が大きい」と指摘した。
#2
■「理念的な傾向が強い世代ではない」
・慶煕大の尹聖理(ユン・ソンイ)教授は「20-30代が文候補を支援したという理由で、彼らを「進歩派」に分類するのは、学生運動世代の錯視現象だ。今回の大統領選で、20-30代は進歩、保守といった価値観よりも、現実的な理由から投票行動に及んだと見るのが妥当だ」との見方を示した。
・高麗大の李来栄(イ・ネヨン)教授は「今回の大統領選では、大学の学費の半額化や兵役期間の短縮、非正規雇用者の問題など、20-30代の有権者に直接・間接的な影響を与える公約が多く打ち出された。20-30代にとって、文候補に投票したのは合理的な選択だったといえる」と指摘した。
・5年前の大統領選では、20-30代の有権者は盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の経済政策や雇用政策の失敗に対する批判から、ハンナラ党(現・セヌリ党)の李明博(イ・ミョンバク)候補を選んだ。大統領選当日に韓国ギャラップが行った出口調査の結果、李候補に対する20代の支持率は40.3%、30代では39.7%に達し、大統合民主新党(現・民主統合党)の鄭東泳(チョン・ドンヨン)候補(20代18.8%、30代27.7%)を上回った。
・カ・サンジュン教授は「当時、李明博候補は747公約(年7%の経済成長により、一人当たりの国民所得を10年以内に4万ドル〈約340万円〉に引き上げ、世界第7位の経済大国を目指す)などを打ち出し、若い世代に「経済的に今よりも良くなる」という希望を抱かせたが、結果は思わしくなかった」と指摘した。一方、ソウル大の韓圭燮(ハン・ギュソプ)教授は「20-30代の有権者が朴槿恵候補を支持しなかった理由は、朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の娘ということよりも、テレビ討論などで上手な答弁ができず、危機を解決する能力が不十分だと思われたためだ」との見方を示した。
■「李正姫候補は20-30代にとっても逆効果」
・尹聖理教授は「統合進歩党の李正姫(イ・ジョンヒ)候補が出馬したため、文候補の票がいくらか割れた側面もある。文候補が当選すれば、北朝鮮と無条件に全面的な対話を再開し、一方的な対北支援を行うという認識が、20-30代の間でも定着していた。これが李正姫候補のイメージと重なったため、いくらか票が割れる要因となった」との見方を示した。
・民主党の関係者は「現在の20代はもとより、今後有権者となる世代も、1980-90年代のように、むやみに野党を支持する世代ではないということを認識し、選挙戦略を練る必要がある」と指摘した。
(本ブログ関連:"(資料)397世代"、"(資料)486世代"、"(資料)40代の変化"、"(資料)40代の変化-2"、"(資料)ソウル市長選挙に見る世代別背景")
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