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2016年6月11日土曜日

韓江「菜食主義者」

英国の文学賞として権威あるものに「ブッカー賞」がある。両親ともに日本人の間に生まれ、後に英国に帰化した作家カズオ・イシグロ(石黒 一雄)が、1989年に「日の名残り」で受賞したことで知られる。

(本ブログ関連:”ブッカー賞”)

ブッカー賞には、さらにロシアブッカー賞(1992年)、マン・ブッカー国際賞(2005年)*などが設けられてきた。その国際ブッカー賞を今年受賞した韓国作家、韓江(ハンガン[한강]、1970年11月27日~)の作品、「菜食主義者(채식주의자)」(2011年 きむふな訳、CUON)を読んだ。
(*)国際ブッカー賞(隔年開催): 実質的にブッカー賞の翻訳文学部門。
期間名称特徴・対象
2005年〜2015年

マン・ブッカー国際賞
(Man Booker International Prize)
【隔年選出】 存命の作家の <生涯の功績>に対して
贈られる賞(ノーベル文学賞に近い形式)。
2016年〜2018年

マン・ブッカー国際賞
(名称は同じ)
【毎年選出へ変更】 特定の <翻訳作品> を対象と
する現在の形式に変更。賞金は著者と翻訳者で折半。
2019年〜現在

国際ブッカー賞
(International Booker Prize)
スポンサー交代に伴い「マン」が取れ、現在の名称に。
ルールは2016年以降の形式を継承。

この作品は3部構成で、「訳者あとがき」によれば、2002年~2005年に発表されたという。
① 肉食を拒絶する妻(ヨンヘ)とそれに戸惑う夫を中心に彼らの視点で描いた「菜食主義者」。娘の肉食忌避を治そうと暴走する彼女の家族。
② 症状の進んだヨンヘに対する、ヨンヘの姉の夫の視点で描いた「蒙古班」。彼は、映像芸術の創作行為と肉欲の錯綜の中でヨンヘを犯す。
③ 山深くにある精神病院のヨンヘを見舞う、姉(インヘ)の視点で描いた「木の花火」。拒食を続ける妹に対する姉の回想、流される無力感。

若い女性ヨンヘを巡って、ヨンヘの夫、ヨンヘの実姉とその夫、それぞれの視点で描かれる。そういえば、地下鉄ソウル駅で見失なった母を探す、家族のそれぞれの視点を主語(代名詞)にして描いた、申京淑の「母をお願い」(2009年)を思い出す。家族の関係が強い世界なのだろうか。しかし、確実に互いの思いが食い違っている。

(本ブログ関連:”母をお願い”、”申京淑”)

「菜食主義者」は3部で構成されているが、それぞれ色合いが違う。①の「菜食主義者」は、序曲に相応しく全体の構図を見極めやすく、物語の要素が織り込まれている。その分、読みやすさを重視している。②の「蒙古班」は、植物化するヨンヘを呼び戻す試みをしているようだ。ここでは、①の父親の強権と同じく、(ヨンヘの実姉の夫である)映像芸術家の暴走が示される。③の「木の花火」は、既にベジタリアンではなく、拒食症に落ちた重度障害の妹を見守る(①の父、②の夫とつながる)実姉の悔恨ともいえる。

文学には素人なので、作品から何を得ようとすればよいかわからない。登場人物の内省で、「~なかった(否定)」、「~のようだ(推測)」という表現が重なると、追いついていけなくなる。文学理解というのは、相当タフでないと難しいようだ。

(映画化されている)⇒  残念ながらYoutube で見られなくなった。
(Youtubeに登録のFrenchie Cerderolに感謝)


(追記)
国際ブッカー賞について

■ Youtube(登録: TBS CROSS DIG with Bloomberg)
「【英国翻訳ベスト50に日本文学23作品】村上春樹だけじゃない“爆売れ”の正体/次は「ポスト村田沙耶香」を探せ/翻訳家・鴻巣友季子が語る出版市場の“地殻変...」(2026/01/15)
    ー https://www.youtube.com/watch?v=CAs9qEQyftQ