市民講座「陶淵明の描いた世界」の第4回目に出席する。(今回を含めて)残すところ後2回、いよいよ最終にさしかかった。今回は幻想好きにとって楽しみな<桃源郷>について、陶淵明が記した散文を解説いただいた。
「桃花源の記」は、武陵の川漁師が渓谷を水源まで遡ったところ、山中に洞窟を見つけて、くぐりに抜けた先に桃源郷と出会う話だ。そこには、見たこともない人々が穏やかに暮らしていた。秦時の乱を避けて以来、漁師の時代(太元年間)までざっと見積もって、600年以上前からこの地に住み続けられたことになるのだろう。彼らから、もてなしを受けた後、去り際に他言無用と次のように口止めされる。
・不(レ)足(下)為(2)外人(1)道(上)也 外人(がいじん)の為に道(い)うに足らざるなり
(訳) 外部の世間の人に話すほどのことではありません。
それでも漁師は、行政長の太守に喋っちゃうんだな。でも、いくら探しても、桃源郷は結局見つからなかった。この記は、後の時代の<物語>に通じるそうだ。
ところで「桃花源の記」は、山の岩間から雲が生まれるような仙境を語っているわけでも、碧眼の美女との遭遇を喜んでいるわけでもない。鶏が鳴き、犬が吠える、のんびりした素朴な光景が浮かんでくる。もしかすると。桃源郷はもっと身近にあって気付かないだけなのかもしれない。
ところで、現在の中国の若者たちが、自然のもとへ行こうと言うとき、この記に語られた武陵の地名を使って、「武陵に行こう」と言うと解説があった。
今回の講義は、「桃花源の記」の前に、九尾の狐伝説などの原典といわれる「山海経」を題にした、「山海経を読む十三首 其の一」の解説があり、終わりには、陶淵明の洒落た自叙伝ともいうべき詩についても聞かせていただいた。
次回(最終回)のために、漢字教育の資料が配られた。宿題である。