公開講座の「雑学大学」は、月2回開催されていて、内容は多彩。今回は、「玉川上水」*の両岸に、江戸中期の元文2年(1737年)に植樹した「ヤマザクラ」による「名勝(=景色のよい)小金井桜」の歴史と、樹下の野草たちについて講演会「武蔵野新田開発と小金井桜と野草たち」があったので参加した。講師は、日本樹木医会元会長の椎名豊勝氏である。
(*)玉川上水: 江戸前期の承応2年(1653年)に上水(=飲用)として築かれた。
以下、聴き間違いなどありましたらご容赦。
現在まで300年の歴史を持つ名勝小金井桜は、武蔵野の新田開発の歴史と重なる。名主の川崎平右衛門は、新田の運営や飢饉に際しての救済など、安定化のため農民への支援を惜しまなかったという。彼は玉川上水に、奈良の吉野山と茨城の桜川からヤマザクラを取り寄せた。
いまだに桜を見られるのは、これまで人びとが植樹を継続**してきたからであり、今後その歴史を継承したい。現在、上水の桜は、他の木々や下草と混在(雑木林化)している。それをどのように整理するか、「生物の多様性」(生態的特徴など)の観点から見直す必要がある。
(**)ヤマザクラの寿命は80年(100~150年)ほどといわれる(最盛は50年目ころ)。
今回、林床の下草を「里山」の考え方(農家・農地 ⇔ 里山(中間地帯・一部手が加わる)⇔ 山林)にもとづきどのように扱うべきか検討し、絶滅危惧から復活した野草が紹介された。
・放置すると、イネ科多年生常緑笹の「アズマネザサ」(シノタケ)の群落に林床が7~8割が覆われる。
・林床にヤマザクラの緑陰が広がれば、本来の自生草本類が育つ環境になる。
・林床で復活した絶滅危惧種(野草)の例:
ー アマナ、 ニリンソウ、キツネノカミソリ、イチリンソウ、ノカンゾウ、ホタルカズラ
最後に、自然とどのように関わるべきかといった議論があることが紹介された。自然のまま、在りのまま手を下さないという考え方。あるいは、今回説明したように里山的な位置づけという考え方・・・だ。