時代が変わったとして真情を曲げることはできない。そうだったと、当然のように振舞うのはもっとつらい。躊躇もあるだろうに。昔からそうだったと言われると、後付けのような言い訳を感じてならない。それでも言葉は繰り返しているうちに、確信や信念になってしまうものだ。
私にとってロックは、エルヴィス・プレスリーだった。ラジオから流れるアメリカンポップスがすべてだった。彼の後を強襲したビートルズにシンクロできなかったのは、もしかしたら時代の潮流を器用に泳ぎきれなかっただけかもしれない。1966年に来日したビートルズに、あの時のぼくの眼は随分と冷ややかだった。
ロックやメタルバンドが流す曲も、記憶に残るのはバラードじゃないかと思う。音楽に求める想いと受け入れる肉体の鼓動、そして自然の揺らぎとの調和。分散より連続を、閾値の限界よりなだらかさを求める。結局、ほっとするものを探している。
エルヴィス・プレスリーだってそうだ。彼の曲で印象深いのはやっぱりバラードになってしまう。「好きにならずにいられない(Can't Help Falling in Love)」(1961年、映画「ブルーハワイ」)はそんな珠玉のひとつだ。それを、完全なまでに純化したのが、2006年、世宗文化会館の22周年コンサートステージで歌うイ・ソンヒだろう。愛弟子イ・スンギとの美しいデュエットで聞かせてくれる。
(Youtubeに登録のD I V A ■ LEE SUN HEE ■、saf8744に感謝)