奇妙なゲームがある。といっても、私の感想だが。四角の壁に囲まれた部屋(入り口の側だけガラス壁)*で、二人の競技者がラケットを使って、交互に壁に打ち当てた球を打ち返すスポーツだ。両者は向かい合う必要はない。とにかく、いずれかの壁に球を打ちさえすればよいのだ。「スカッシュ(Squash)」という。
(*) 大きな競技では、4面の壁がすべてガラス張りになっているものがある。
昔、見た映画に「スカッシュ」をする場面があった。記憶にはスパイ映画だったような、二人の人物が秘かに情報交換をする場所に、この競技場を選んでいた。そんな冷徹な、そして怪しい舞台に似合った感じがする。
(”Tinker Tailor Soldier Spy” :Youtubeに登録のPeter Heywoodに感謝)
このゲームを見ていると、ものごとの運びに、スカッシュに似たものを感じる。ゲームの壁が、発言の反響に似て、思わぬ方向へ飛びながらも、相手はしっかり打ち返そうとする。返し損ねても、後ろの壁(つまり透明なガラスの壁)がいったん反射してくれる。
いつも思うが、この世界に、ガラスの壁があるような気がしてならない。でもねえ、ある日突然、そのガラスの壁が消えてしまったらどうだろう。あてにしていたものが。そんなつもりはないかもしれないが、無意識に後ろ盾にしていたものが、なくなるってことがあるかもしれない、ということを。