始めに、1866年、フランス艦隊の江華島占領(丙寅洋擾、병인양요)と当時の朝鮮文化について次のように紹介された。
・朝鮮時代末の大院君体制下、フランスの江華島侵攻(1866年)は、西欧による最初の侵入事件である。1ヵ月ほどで占領したフランス軍は、財宝などを略奪して撤退する。ときのフランスの将軍は、<貧しい家にも本があり、また、床暖房、寺院にかけられた肖像画、越冬用キムチ漬けの甕>など記録した。朝鮮文化を知り、3千冊にのぼる書籍も持ち帰ったという。
・朝鮮時代、本に劣らず絵も好まれ、どの家にも絵が掛かった。パンソリ「春香歌」で、春香の部屋を飾る「部屋飾り」は、その様を詳しく描写する。南部にある全羅北道南原地域は、漢陽(現ソウル)から遠く離れた地だ。そこに引退した妓生の娘、春香は、四方の壁に数々の絵を飾った。
・昔、人々は正月に「歳画」を掛け、悪鬼払いした。虎や鷹の動物絵が多かった。学者ソンビは、詩を書いたり絵を描くことも基本的嗜みとした。有名な画家の逸話に、人々が彼らの絵を手に入れようとする物語がある。絵は日常生活の一部だった。
▼ 奚琴(ヘグム)の演奏「月下情人(월하정인)」を聴く。月明かりに照らされた二人の姿と心を今様に描く。
・「月下情人」の絵は、朝鮮後期の画家、申潤福の代表作のひとつだ。月明りの下、ある家壁の角に、男女が立つ姿を描き、「月の光が照らす真夜中に、二人の心は二人だけが知っている」と残した。
月沈沈夜三更
両人心
事両人知
後世の人々は、この言葉から二人の心がどうなのかを推し量った。申潤福や金弘道(김홍도、1745年~没年不詳)は、朝鮮時代の庶民生活を描いた風俗画で知られる。喜ぶ民を描いたからこそ、それら作品が後の世にも知られた。
▼ パンソリ「水宮歌(수궁가)」から「兎絵像のくだり(토끼 화상 대목)」を聴く。なんだかアニメ風な味わいがする・・・。
・亀は、兎を捕まえに陸地へ行く計画を立てるが、海の中で生きたため、兎を一度も見たことがない。そこで、絵師を呼び、兎の絵を描いてもらう、興味深い場面を歌った内容だ。