KBS WORLD「国楽の世界へ」は、先週水曜日(1/21)に文化的なキーワードに基づく韓国文化シリーズの第89回として、「傷ついた心を癒す切ないメロディー」の短歌(단가)「思い出(追憶、추억)」、雑歌(잡가)「フンタリョン(흥타령)」(南道民謡)、パンソリ「興甫歌(흥보가)」にまつわる話を紹介した。
始めに、林芳蔚(임방울、1904,5?年~1961年)の「思い出」の成立について次のように紹介された。
・歌い手、林芳蔚は、パンソリ「春香歌(춘향가)」から、獄中の春香の姿を「スクテモリ(쑥대머리)」の歌で表して一躍スターとなり、(朝鮮、日本、満州で)100万枚のレコードを売上げる。
・林芳蔚は、珊瑚珠(산호주)と恋に落ちて、2年間行方が分からなくなる。その間、彼は声を痛めて、愛する彼女を残して一人去る。彼女は彼を探して(智異山?)山中の洞窟にたどり着くが、会ってもらえず、結局、病気になってこの世を去る。彼は、そんな彼女を抱えて泣きながら歌ったのが「思い出」として伝わる曲だ。
▼ 短歌「思い出」を聴く。パンソリ風、即興曲・・・ところで山にこもって研鑽というのは、男の歌い手に共通する伝説だろうか。
(参考:ブログ「キム·ミョンゴンの世界の話」)
次に、朝鮮時代末活躍した宋興祿(송흥록、1801年~1863年)を次のように紹介された。
・歌の王と言われるほどの歌い手、宋興祿は、ある宴会で妓生の孟烈(맹렬)と恋に落ちた。彼の歌に皆が感動する中、彼女だけ気に入らぬ表情をしていた。歌は悪くないが、まだ未熟な面があるといわれ、プライドが傷ついた彼は帰郷して、歌の練習に励んだ。後日、再び彼の歌を聞いた彼女は、ようやく彼の歌を認めた。その後二人は一緒に住むことになる。ある日、喧嘩の末、彼女が家を出ようとしたのを、彼は、体は去っても心を残してくれと歌った。民謡「興打令(흥타령)」の中に今も伝わっている。
▼ 南道民謡「興打令」を聴く。歌い手(安淑善)の伸びやかな声ときれのあるリズム、イ・ソンヒの源流を見た気がする。
最後に、パンソリ「興甫歌(흥보가)」にある人々の共感性について次のように説明された。
・昔の歌は生活の喜びや悲しみも表現するからこそ、深く共感できる。パンソリ「興甫歌」に、興甫(흥보)が鞭打ち刑を受ける場面がある。昔、罪ある者に鞭打ち刑を科したが、金持ちや権力者は罪を犯して鞭打ち刑を科せられても、金で人を雇うことができた。貧しい彼は、子どもたちのため、自ら鞭打ち刑を受ける。貧しい時代にそういうこともあった。パンソリには、彼らの心を察して歌い、悲しい歌に合わせて泣いたり笑ったりする中で、互いを理解しあえる力がある。
▼ パンソリ「興甫歌」から「興甫が鞭打ちに科せられる場面(흥보 매품 팔러 가는데)」を聴く。・・・切ない話しのよう。