マニアやコレクターを辞書に探すと、熱狂者とか収集家があてはまる。江戸時代には奇人という言葉でくくられたようだ。奇人の系譜は、遠くに蘭学を見ながらも、後の博物学(本草学)に通じた。江戸諸藩に開いた独自の文化と経済交流という実学的なベースがあって、奇人が尊重される気風が醸成されたといえるだろう。奇人尊重の気風は英国においても同様だった。
さて現代の奇人は、高度に専門化して研究者に吸収される一方、市井で趣味人として生き残って、大方はのんびりと趣味世界にいる。オタクは時代とぎりぎり磨りあって、固有の指向を確立した新しい芽だ。奇人の大樹は、枝を伸ばし、芽を吹いている。
そんなとき、ふと思うのは韓国の書店で、鉱物採集マニア向けの(韓国産)鉱物図鑑が見つからないことだ。なぜ鉱物趣味が広がらないのだろうか。石(鉱物)という見える物に価値を知り、価値を付けるマニア的な世界がないのだろうか。
(本ブログ関連:”鉱物図鑑”)
このことは、音楽趣味が物(CDなど)を経るかどうかといったことでも、日本と韓国の音楽ファンの傾向がうかがわれる気がする。私は、イ・ソンヒのCDやLPを収集したくなる。重複したものがあれば、日頃、イ・ソンヒファンの心理を黙って聴いてくれた人たちにプレゼントしたりするのだが・・・間違ってないよね。
(本ブログ関連:”第15集「SERENDIPITY」を3つ”)
朝鮮日報(日本)の記事「多くの国で姿消すCD、日本では今なお人気」(10/5、ヤン・モドゥム記者)は、韓国と比べて圧倒的にCD購入者が多い日本の状況について、韓国側の視点から次のように紹介している。(抜粋)
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・スマートフォン(多機能携帯電話端末)やMP3プレーヤーの普及により、音源の世界市場ではデジタル音源が席巻している。楽曲をダウンロードしたり、インターネットを通じてリアルタイムで鑑賞したりする「ストリーミング」の世界シェアは60%(売上基準)に達している。ところが、日本市場の「王」は依然としてコンパクトディスク(CD)で、音源のシェアの80%を占めている。韓国では10年余り前に消滅した「ミリオンセラー(売上げが100万枚以上)」が今年二つも出た。日本人はなぜ、1枚当たりの価格が2500-3000円もするCDを好むのだろうか。
・これは日本人特有の「収集癖」と「ファンダム(特定の人や物に対する熱狂的な支持)」が結び付いた現象だという見方が出ている。ある歌手の歌を聴くだけにとどまらず、そのCDなど関連商品を所有することを好むというわけだ。ヒット曲を集めたCDも、関連商品を収集する人たちの間で人気が高い。
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韓国の音楽消費パターンは、圧倒的にストリーミング・サービスが多い。CDが少ないのに加えて、歌手の以前の歌を再編成したCDに歌詞カードがないこともある。この辺に、物(CD)を介さない音楽購入の理由があるような気がする。
(本ブログ関連:”歌詞カード”、”ストリーミング”)
上記記事が前提にしていると思われる、朝鮮日報(韓国)の記事「IT強国日本の変わらぬ音楽CD愛」(9/18、イ・ヨンソン記者)は、ニューヨークタイムズの情報で日米対比しながら、日本のCD売上げが多いことを次のように紹介している。(抜粋)
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・音楽を聞くプラットホームがモバイルに変わって、関連産業もダウンロードとストリーミング中心に再編されている。だがIT関連技術力にあって、世界最高を自負する日本は例外だ。
・16日(現地時間)、ニューヨークタイムズによれば、日本の音楽市場で一番である消費方式は相変らずコンパクトディスク(CD)購買で、全音楽市場売上の85%を占める。ストリーミング・サービスの比重が90%に達する我が国(韓国)や、ダウンロードとストリーミングを合わせた比重が60%を越えるアメリカとは対照的だ。
・世界最大の音楽市場であるアメリカの場合、レッド・ツェッペリンとジェイスン・ムラーズ(Jason Mraz )などの所属会社で有名なアトランティック・ レコードのデジタル音源販売収入は、すでに6年前のCD販売収入を越えた。一時、全世界レコード流通市場を牛耳ったタワーレコードは、デジタル音源市場の急成長による実績不振に、2006年の一年間、アメリカだけで89の売り場を閉鎖した。
・これとは対照的に、日本の最大移動通信社NTTドコモが運営を受け持っているタワーレコード日本の場合、東京、渋谷の地下1階、地上8階規模の単独売り場が盛業中であることをはじめとして、日本国内85の売り場を運営している。年売上げは、5億ドル(約5200億ウォン)に達する。
・ニューヨークタイムズは、伝統のIT強国日本の格別なCD愛が、収集好きな日本人の独特の気質と関連があると分析した。我が国(韓国)でも一時流行した、特定アーティストの「ヒット曲選集(Greatest hits)」アルバムが日本で特に人気が高いのもこのような指向と関係がなくはないという。
・これに加えて、過度に慎重かつ几帳面な日本のビジネス慣行も、もうひとつの原因(=音源ダウンロード販売普及の遅れ)とされた。アップルがアイチューンズ・ストアの日本サービスを最初に始めたのは2005年だが、7年後である2012年に達して日本最大レコード会社ソニーミュージック・エンターテインメント所属のアーティストの音源を供給できたと、ニューヨークタイムズは伝えた。
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