昼前(10:30~11:00ころ)、公園併設の「自然観察園」を巡った。おとつい(4/10)、隣接の公園で「サクラ」を観察した。それで、きょうは自然観察園の野草を中心に観察しに出かけた次第。春の観察園は、数日空けると、草花数が一斉に咲き広がっているのに驚く。
(本ブログ関連:”自然観察園”)
今回、懐かしい「レンゲソウ」を中心に写真を撮りたいと思って訪れた。
(本ブログ関連:”レンゲソウ”)
親父の遺した古い本であるが「摘み草入門―土を愛する都会の人へ」(福島誠一著、女子栄養大学出版部、昭和55年(1980年))に、「れんげそう 紫雲英」の項があり、地面を這う茎から立ちあがり花を咲かせるこの草について(孫引きであるが)、次のような紹介がある。
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野が似つかわしいのか「やはり野に置けれんげそう」などといわれる。『故事ことわざ辞典』(鈴木棠三・広田栄太郎編)によると、俳人飄水*(ひょうすい)が、遊女を落籍しようとした友人を戒めて「手に取るなやはり野におけ蓮華草」と詠んだのだという。
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(*)飄水: ネットでは「瓢水」の文字が多く使われている。
「手に取るなやはり野におけ蓮華草」の句が、<友人を戒め>るために語られたとするなら、いかにも遊女をアンタッチャブルな存在に貶める残酷さを感じさせる。春の陽射しを受けて静かに風に揺れて咲く、レンゲソウに対する想いが欠落していると考えるのは現代だからか。芭蕉が「野ざらし紀行」に詠んだ富士川の辺で出会った捨て子(三歳ばかりと知ると胸が痛む)の句もしかり。
次回の農耕のため、田畑に栄養を貯えようと植えられたレンゲソウへの期待にそぐわない感がして、ちょっと残念で興ざめする・・・まあ、いいとしよう。
(参考)
瓢水の「野に置け」の生い立ちについて考察
「手に取るなやはり野に置け蓮華草(瓢水?)」(吉海直人 同志社女子大学 日本語日本文学科 特任教授、2023/09/06)
ー https://www.dwc.doshisha.ac.jp/research/faculty_column/18968
観察園入口にある掲示板には、現在開花している花(樹)の名とその場所を、写真と地図で示している。また配布資料箱に、A4サイズの印刷物「4月自然観察園のだより(開花植物リスト) / 観察順路図」が配置されているので、それらを元に以下観察した。
レンゲソウ
観察園内の湿地を巡る板橋の下に、マメ科の「レンゲソウ」がわずかに群生している。休耕地に隈なく咲く光景は望めないが、子どものころの記憶につながる特別な花を随所に発見できる。ちなみに、標準和名として「ゲンゲ」だそうだが、一度もそう語ったことがない。
ヤマブキ(写真左)とヤマブキソウ(写真右)
・入口の掲示板裏手に、バラ科落葉低木の「ヤマブキ」(花弁5枚)が黄色の花を咲かせている。
・ヤマブキの花と似た花を咲かすケシ科の野草「ヤマブキソウ」(花弁4枚)が、群生している場所がある。この時期、圧巻である。
左から、サクラソウ、ラショウモンカズラ、オドリコソウ、クサイチゴ
・湿地に咲く「サクラソウ」の花弁は、写真では薄紫色に映っているが、実際はもっと紅く紅紫色に見えた。
・昔、羅生門で切り落とされた鬼女の腕と、「ラショウモンカズラ」の花形が似ているといわれるが、そんなおどろおどろしいものでない。むしろ優しいくらいだ。
・古風で地味な感じがする「オドリコソウ」があちこちに咲いている。これからの勢いを、まるで秘めて蓄えているようだ。
・「クサイチゴ」は意外に、一輪でポツンと咲いている。これから膨らむ赤く小さな実と比べて、白い花弁がやたら大きく感じる。
(付記)
一通り巡ったところで、ポツポツと小雨が降り始めた。空模様が怪しくなったので、急いで帰路についた。