昼過ぎまで冷たい小雨が続いた。桜が満開のこの時期、降ったりやんだりする雨を「まだら雨」と表現できるか調べたところ、辞書になく、ネットはきっぱりとそんな表現はないという。適切な言葉を探したところ、「花時雨」があった。冷たい水滴が花弁を濡らす、そんな中(ふだんは無視されがちなヒヨドリが)蜜を吸っている光景が浮かんでくる。
桜と雨は互いに打ち消し合うようで、少々さびしい気がする。
満開の桜が夜道を明るく照らす「夜桜」はどうだろう。与謝野晶子の歌に「清水(きよみず)へ 祇園をよぎる花月夜 こよひ逢ふ人みな美くしき」(「与謝野晶子歌集」与謝野晶子自選、岩波文庫 ・・・ 歌集『みだれ髪』より)がある。
今どきは照明が強く、暗い夜空を忘れるように夜桜を照らし出す。けれど、この歌が詠まれた時代(明治34年【1901年】)の夜は、もっと朧だったろう。
夜桜のもとを、行き交う人々を美しいと表現する一瞬の見極めと、想像力は若くてたくましい。夜桜には心を浮かせる不思議な力がある。
それでは、ほんわりと端唄の夜桜へまいりましょう。
端唄
「江戸端唄集」(倉田喜弘編、岩波文庫)の「夜桜や」
-------------------------------------------------------
夜桜*や 浮れ烏(がらす)**の まひまひと 花の小かげに 誰やらが居るわいな とぼけさんすな 芽柳***が 風にもまれて ふうわりふわりと ヲゝサそうかいな そうじゃわいな
-------------------------------------------------------
(*)上記文庫の補注より: 夜桜 新吉原・仲の町に植えられた桜
(**)上記文庫の補注より: 浮れ烏 ねぐらに落ち着かない鳥。転じて、遊里の中をうろつき回るならず者。 ← 遊里の夜を浮れ歩く人で、「ならず者」というのはちときついな。
(***)上記文庫の補注より: 芽柳 「めふきやなぎ」と唄う。
■ Youtube(登録:朝川玲伎)
「夜桜」
「端唄 夜桜 朝川玲伎」
ー https://www.youtube.com/watch?v=NP7VnxYB4oM